ゴン吉

ヴァチカンのエクソシストのゴン吉のレビュー・感想・評価

ヴァチカンのエクソシスト(2023年製作の映画)
4.0
実在したヴァチカンのガブリエーレ・アモルト神父による少年に憑りついた悪魔祓いの奮闘を描いたオカルト作品。
原作はガブリエーレ・アモルト神父の回顧録「エクソシストは語る」。
ラッセル・クロウが主演、ダニエル・ゾバット、アレックス・エッソーらが共演。  

1987年7月、1年前に夫を亡くした一人の女性(アレックス・エッソー)が、アメリカから娘と息子をつれてスペインのサン・セバスチャン修道院にやってきて、傷んだ建物の修復を始める。しかし息子が何かに憑りつかれたような自傷行為をするようになる。病院でMRI等の精密検査を受けるが脳には異常が認められなかったため精神異常と診断さる。一方ヴァチカンでは、その少年には悪魔が憑依したのではと疑い、悪魔祓い担当のアモルト神父(ラッセル・クロウ)に調査を依頼する。アモルト神父は、少年が悪魔に憑りつかれたと判断し、現地の若きトマース神父とともに、少年を救うべく奮闘する.....    

主人公のガブリエーレ・アモルト神父は、2016年にこの世を去るまでに数万回の悪魔祓いを行ったとされる実在のチーフ・エクソシストで、本作は彼の回顧録をもとに作られた作品です。
ホラー映画の金字塔である”エクソシスト”は、”メリーランド悪魔憑き事件”をもとしにしたウィリアム・P・ブラッティによる小説が原作ですが、モデルとなった少年の周囲で起きたポルターガイスト現象は、今日では医学的に少年がNMDA受容体脳炎であったことで説明されている。
NMDA受容体脳炎の診断にはMRI検査も行われることから、本作品でも少年がMRI検査を受けて脳に異常がないことを確認するシーンがあるかことが興味深い。
そして悪魔の憑依と疑われた人の98%が脳疾患や精神疾患であることが本作でも説明されており、そのことも本作の重要なキーとなっている。
一方でNMDA受容体脳炎は稀ではあるがMRIで異常が認められない患者もいる。
過去に映画やTV、コミック、小説で描かれていたSFや怪奇現象が、科学の進歩によって現実になったり現象が説明できるようになってきてる。
本作品の少年は果たして?
そんなことを考えながら鑑賞したが、ラッセルクロウがベテランのアモルト神父を好演しており、若きトマース神父とバディを組んで悪魔と対峙する展開は見ごたえあった。
また悪魔に憑りつかれていなかった少女への対応不足から彼女を死に追いやったアモルト神父の過去なども綴られ、宗教による心のケアの重要性も描かれている。
2人の神父が、それぞれトラウマを抱えているところも人間性が感じられてストーリーを盛り上ている。
単なる憑依した悪魔払いのオカルト作品ではなく、悪魔には別の目的があるなどモンスターバトルアクションの要素もあり、最後までハラハラしながら楽しめた。
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