しゅん

逃げきれた夢のしゅんのレビュー・感想・評価

逃げきれた夢(2023年製作の映画)
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「途中の人」の「途中」を撮る、というのは『枝葉のこと』『お嬢ちゃん』でも連なるテーマだが、本作はおっさんの数日を切り取るという点で商業的なチャレンジが大きい。しかも、性格造形のカッコ悪さ・ウザさという点では本作の光石研がピカイチである。あの、「ニカッ」と音が聞こえてきそうな笑顔の場違いさ。凡庸さと病が踵を接する笑顔に、見てはいけないものを見てしまったような気まずさが残り続ける。ステレオタイプな思い出を語るとき、「ソウルフード」「加齢臭」などのテレビと新聞から覚えたであろう言葉がうわつく時、その怖さがフッと湧き立つ。人情と狂気の接点。カットを切り返しで割る会話と長回しで背中を追いかけるシーンの接点。その微妙なポイントを本作はこじ開ける。

音楽:曽我部恵一が意外だった。
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