カメラは定時制高校の教頭である末永をほぼ全編にわたって追っており、光石研の演技はそれに応えて見ごたえがある。
末永は決して悪い教師ではない。むしろ生徒思いの良い教師だが、結局教師ができることは「そこそこ」であり、生徒の人生を動かすことはできず、感謝もされない。そしてその程度には良心的に仕事に打ち込んできたせいか、家族との間には決定的な溝ができている。
こうして定年が近づき、居場所も成し遂げたものも何もないような状況に置かれていることにゾッとさせられる。
ただ彼の「記憶が薄れていく症状」は定食屋のエピソードと診察のシーンで示唆されるだけで、他にその兆候が見えないのはやや不可解だった。
2024.5.2