たけうち

レオノールの脳内ヒプナゴジア(半覚醒)のたけうちのレビュー・感想・評価

-
フィリピンの映画、というものにそもそも馴染みがなく、どんなお話なのかイメージがまったくわかなかったのですが
このポスターがとても魅力的でした
しかし、内容はもっと魅力的でした!

72歳のもうおばあちゃんと呼ぶのがふさわしい年頃の女性レオノールは、かつて映画監督をしていたのですが、ずいぶん前に引退し現在は借金もある状態で同居する息子も家を出たがっていて、とても進退極まった状況でいます
そんな時に新聞の広告で映画シナリオの募集広告を見つけ、一念発起し再び映画の製作に挑もうとするのですが、ひょんなことからテレビが頭の上に降ってきて大ケガし、その衝撃でレオノールおばあちゃんは自分の映画の世界の中に飛び込んでしまったのでした…っていう導入です
レオノールおばあちゃんが、とにかく魅力的なんですよね
かつて製作していた映画には、ちゃんとファンが多くいた描写がありますし、作中作として出てくる映画もちゃんと面白いです
またその映画が、コテコテのB級アクション映画なのがたまりません
銃撃戦ありステゴロあり、ラブロマンスも家族愛も盛り込まれた分かりやすい映画で、これをレオノールおばあちゃんが書いて製作してたと思うと感慨深いです
そもそも、ご高齢の女性の映画監督って現実世界にそうそういらっしゃらないし、しかもその監督の作りたい映画が、小難しくなく誰でも楽しめるB級アクション映画! っていうのが、めっちゃいい…好き…ってなっちゃうんです
レオノールはその後どうなるのかというと、わりとメタフィクションの展開に踏み込み、しかし細けぇことはいいだろ! とオチをぶん投げる結末になるので、相当に人を選びます
自分はめちゃくちゃ好きだし、みんなで歌う場面なんか、ちょっと泣いちゃって「自分はなぜこの展開に泣くのか?」と疑問に思ったりもしたのですが、なんかもう理屈じゃなくて、好きだからいいんだよ、レオノールおばあちゃんも映画を作りたかったんだよ、だからいいんだよ! こういう映画がいいんだよ! って納得できちゃうんです
作中の細かな仕掛けとか、カット割りとか、要所要所ですごく繊細な事をされているのに、突然雑にもなるところとか、強い魅力と明らかな欠点が同居してるのが、本当に素敵で不思議な映画です
こういう映画のことを、ボンクラ映画っていうのかな、きっとそうなんだなと腑におちました

強く母と息子の関係を描く映画でもあるので、先日観たばかりの『ボーはおそれている』を連想したりもしました
『ボーはおそれている』は何か分からんけどめちゃくちゃ面白い!
『レオノールの脳内ヒプナゴジア』は何か分からんけどめちゃくちゃ好き!
でも何が好きなのか、よく分かんない! 
ひょっとしたら今年いちばんの愛するボンクラ映画、になるのかも
たけうち

たけうち