映画スニーカー図鑑

ドリームダンクの映画スニーカー図鑑のレビュー・感想・評価

ドリームダンク(2023年製作の映画)
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Nike Kobe 5 Protro Bruce Lee (主人公:チャンが前半で着用)
Nike Flex Control (チャンが中盤、トレーニング・シューズとして着用)
Nike Kyrie Flytrap 4 Black Cool Glay (チャンが中盤、トレーニング・シューズとして着用)
Nike KD Trey 5 Ⅸ Black Racer Blue (チャンが終盤、トレーニング・シューズとして着用したのち、最終戦でも着用)
その他、数多くのスニーカー/バッシュが登場する。

「高校生のチャンは学校のバスケットボールのスターと、アメフトの最終戦の日に自身がダンクを成功させられるか否かの賭けをする。身長173センチのチャンにとっては無謀ともいえる賭けだったが、彼はダンクの猛特訓を始める。当初の目的は、一目ぼれしたクリスティのハートを射止めること、そして、学校の生徒たちからの賞賛を得ることだった。しかしその過程で、チャンは自分自身について、そして友情や家族関係について改めて見つめ直すことになる。やがてチャンは奮起し、正々堂々とダンクに挑む。」(公式あらすじ)

 『Chang Can Dunk』は数多く存在する、邦題で観客を遠のけているタイプの傑作バスケ映画のうちの一本。近年では久しく観なかったような友情・努力・成長のアツい王道青春スポーツものだ。前半、新学期のイメチェンに挑むチャンが履いているのはブルース・リーにインスパイアされたカラーのコービー5、NBAファンの中国系アメリカ人の高校生なら、このチョイスは必然だろう。
 個人的にグッと来たのは、さり気ない“ポケモン”の引用。初見時はよくあるアジア系ネタのギャグかと思わされたが、チャンの成長をポケモンの“進化”と重ねたり、英語版OPテーマの引用でライバル役との関係の変化を仄めかしたり、ドラマに活きている引用の仕方だ。
 アジア系アメリカ人が日常的に受けるマイクロ・アグレッションの描き方も非常に秀逸。鑑賞後に振り返れば、ズルして手柄を挙げる/オンラインで相手に恥をかかせる/殴りあいの喧嘩をする……主人公とライバル役の生徒がやらかしたことを並べると、作り手の確信犯的な類似性が見られる。無論、これらはやるべきでないことであるのに間違いはないのだが、同じことをやらかしていても中国系のチャンは糾弾され、何故だか白人の生徒は許されるどころか、周囲から称賛さえされることも。こんな光景は白人特権がまかり通る世界でよく見られるもので、アジア系へのマイクロ・アグレッションを描く映像作品としては、ジーン・ルェン・ヤン原作のドラマ『アメリカン・ボーン・チャイニーズ 僕らの西遊記』にも近いものがある(チャンの親友役のベン・ウォンは同作の主演だ)。
 しかしまぁ、覚悟を決めた奴の表情っていうのは本当に良いものだ。欺瞞を乗り越え、自らを受け入れてからのチャンの顔付きの変わりようが本当に素晴らしい。主演のブルーム・リーも、本作で長編デビューのジンギ・シャオ(Jingyi Shao/邵竫一)監督も、今後の活躍が楽しみな若き才能だ。


衣装デザイン:Joshua Marsh
登場・コラボ:登場のみ