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法廷遊戯のハルのレビュー・感想・評価

法廷遊戯(2023年製作の映画)
3.6
『五十嵐律人』原作のミステリー作品。
司法試験の説明、ロースクールの解説を混じえながら、弁護士になった久我(永瀬廉)が元同期生の起こした事件に向き合っていく。

いわゆるエリート層は“予備試験”という日本で最も難しい国家試験を在学中に突破し、司法試験の受験資格を取得後、司法試験→司法修習ルートを目指す(あくまで個人的主観です。“アクチュアリー”という超特殊なフォーマットの試験もありますが、例外的な位置づけなので知名度的には予備試験が最も難関なイメージ。予備試験ルートからの司法試験受験者の合格率は例年9割越え)
それとはべつに修学することで司法試験の受験資格を得られるロースクール制度は海外を模倣して作られたものだが、一部では大失敗と酷評されていて、市場がどんどんシュリンクしている現状もある。
飛び級を可能にしたり制度改革をしてはいるが…在学中に司法試験を突破、とのナレーションがはいるため、本作の結城(北村匠海)は予備試験ルートであり他は大学院ルートなのかな?

そうした制度の背景を踏まえつつ進む物語。
最も印象に残ったのは杉咲花の圧巻の芝居力。
彼女の迫力に気圧される場面が多々あり、表情で魅せる芝居、感情の起伏の表現力はピカ一な女優だと思う。
永瀬廉の弁護士役も様になっていたし、オールマイティな北村匠海には隙がない。
北村匠海は本当に器用な役者だね。

ちなみに本作は全体を通じて法律を題材としつつも、ヒューマン・ドラマの要素をメインに構成している。
久我、織元、結城の潜在化している繋がりが健在化していく過程が肝であり、こうした“仕掛け”を楽しめるかどうかで評価の割れる一本。
原作は未読だが、より詳細にバックボーンを深堀りしているのかな?

また、本作で気になった点が一つ…
それはナレーションベースで説明を加えながら、話が進む事。
どうしてもテンポ感が悪くなり、流れが止まる…没入意識が削がれてしまうため、苦手な演出であり自分にはマイナス要素だった。

『無辜ゲーム』や現行司法制度に対する問題提起を絡めながら、展開していく流れは興味深いが、あくまで『法律』をスパイスに活用した上での感情面に重きを置いた邦画作品。
役者のファン層をはじめ、人を選ばずなアプローチは悪くないけれど、怜悧な法廷映画として突き抜けてほしい側面も。
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