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法廷遊戯のCINEMASAのネタバレレビュー・内容・結末

法廷遊戯(2023年製作の映画)
1.5

このレビューはネタバレを含みます

 監督は『百夜行』、『神様のカルテ』シリーズ、『サクラダリセット』二部作、『そらのレストラン』、『ドクター・デスの遺産 -BLACK FILE-』などの深川栄洋。なのだが、普段は撮りたい作品をなかなか撮られず、メジャーで雇われ仕事に徹している感が強い。この人の本領は『狼少女』、『真木栗ノ穴』、『光復』、『42-50 火光』といった作品群であろう。本来は作家性の塊のような映画作家だが、彼は自主映画出身で徒弟制度の外部から飛び出して来た才能だ。

 あのー……

 <イヤミス>っていうんですか? そんな感じ。もう飽きた。<イヤミス>という着地点のために物語が奉仕しているというか…… そこに社会派テイストを盛り込んだような作品だけれども、観ている間、「監督が山本薩夫だったら、或いは熊井啓だったら……」と思いながら観ていた。

 タイトルが出る前(=アヴァンタイトル)までに展開される、最初の<無辜ゲーム>シーンにおけるリアリティの欠如と、一人のロースクール生に扮する戸塚純貴のアホみたいなオーバー・アクトに早くもゲンナリさせられた。外連どころの話ではない。これは明らかにやり過ぎだ。加えて、最近、「アンタ、作品、ちゃんと選んでるか?」と疑問に感じるほど出まくっている柄本明の<出ています感>に頼った演技と、大森南朋のこれまた<やりすぎ演技>が輪をかけて頭を抱えてしまった。

 物語の進展と共に、馨殺害の真相と、それに纏わる各人の過去が明らかになって来るあたりでは、<冤罪>の問題も浮上し、一瞬、社会派の様相も帯びるため、「おっ!!」と思い直したのだが、結局は尻すぼみ。「なんか、ヤな話だね……」という感覚しか残らなかった。面白いか、面白く無いかと端的に問われれば、これはもうハッキリと「面白く無い」と答える。

 細部で描かれる<薄汚れた幼い姉弟>の登場シーンに、初期の秀作『狼少女』に漲っていた深川栄洋らしさが垣間見られるけれども、それが持続しないのも問題。

 加えて細部が出鱈目だ。大森南朋扮する盗聴野郎が、彼を発見した永瀬廉に、インスタントの蕎麦をぶっかけて逃走する。次のカットが、大森を追いかけて街を疾走する永瀬廉を捉えたものだが、彼の着衣には一切の染みも無い。髪の毛も蕎麦汁で濡れていない。「記録(=スクリプター)、何やっとんじゃー!」と思うと同時に、「イケメン俳優を汚されへんかったんかな?」とも思う。思うけれども、「ほなら、そんなシーン、わざわざ描かんかったらエエねん」だとか、「それぐらい演じろよ」だとか思う。そもそも、永瀬廉って、飛び抜けたイケメンだとは思わないのだけれどもなあ。クラスに2・3人は居そうな感じがする。これが目黒蓮クラスのキラキラ超イケメンだったらば、また興行展開も含めて違って来たのであろうけれども…… あと、杉咲花。彼女は決して下手ではないけれど、『無限の住人』等、これまでの作品でも繰り返されて来た<がなり芝居>が本作でも見られる。これにも、もう飽きた。

 筒井道隆の地味ながら堅実な助演振りや、1シーン(3カットだったかな?)のみ出演の生瀬勝久のべらぼうな巧さには驚かされたが、単なる駒扱いされる大半のキャラクター、もったいぶり過ぎてモタモタしている上に不自然極まりない語り口が耐え難い。加えて、観客を突き放すならトコトンまで突き放せば良いのに、無理矢理に取って付けたように繰り出される爽やかチックなラストシーン……

 ほんま、アレ、なんやねん……?

 思わず、小声ながら、エンドロールが始まった瞬間に「……はぁ? アホちゃうか?」と声が出てしまった……

 King & Princeの『愛し生きること』なる主題歌が響き渡る中、「こういうのホント、困る…… タチが悪いよ……」と半ば呆れてしまった。
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