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法廷遊戯のdm10foreverのレビュー・感想・評価

法廷遊戯(2023年製作の映画)
3.8
【可視化】

ということでやって参りました。
「不定期開催dm的映画祭in暑かったんと違うんかい!?」の1本目はこちら「法廷遊戯」です。

鑑賞前の素直な印象としては「ズル滑り」の危険すらも感じ取っていた1本。
完全に「スケジュールパズル」の穴埋め案件として選んだだけのつもりでしたが・・・・。

これはこれで中々いいんじゃない?

こう見えても法学部出身のdmは「法律モノには厳しくってよ!」・・・っていうほどまじめに勉強してもいないんですが、今作では必要以上に「小難しい法律」を前面に出さずに、あくまでも「司法制度」や「法廷戦術」に徹したミステリーだったので、法律的な難解用語も殆ど出てこない「比較的難易度低め」の安心設計だったと思います。
タイトルにもある通り、この作品はあくまでも「法廷」の「遊戯」であって、被告と原告、あるいは検察側と弁護側の「駆け引き」や「心理戦」の要素が大きく影響するんですね。

とは言え、日本の裁判制度は非常に形式的なものであって、実際に裁判長が「カン!カン!」って木槌を叩くような場面はまずないし、突然裁判中に「バ~~~ン!!」と新事実が公表されて善悪が逆転するなんてことはほぼあり得ないと言ってもいいです。

僕も実際に何度か刑事事件の裁判を傍聴したこともありますが、基本的に裁判って一つの事件に対して沢山の手順を踏んで審議しなければいけないので、とっても時間がかかるんですね。
なのでどんなに軽微な事件であったとしても一回で結審することはまずないし、ましてそれが「殺人」などの重大事件ともなれば更に期間が長くなるのは火を見るよりも明らかかも・・・。

そんな感じで「淡々と」そして「だらだらと」行われる日本の裁判。

アメリカのような陪審員制度がある裁判なら、陪審員たちの心情に訴えかけて判決を引き寄せるなんて戦術もあるので、法廷でドラマティックな場面に遭遇するなんて映画もよくありますが、日本の裁判員制度ではまずそれもないですし、本当に「淡々と進む」っていうのが一番しっくりくる表現じゃないかな・・・。

特に日本の裁判では「(事前の)手続」が重要となるため、外部の人間がいきなり傍聴に行ったところで全体像が把握しにくいっていうのはありますけどね。

でもその「外からは見えにくい手続き」の部分で「権力」や「忖度」や「プライド」などの色を付けられてしまったとき、本来裁判によって求められるべき真実自体もその「筋書」によって結論を書き換えられてしまうことがあるんですね。

戦後の裁判だけでも、日本の裁判ではいくつかのあり得ない冤罪を生み出してしまいました。
客観的に聞いても「それは無理だろ?」という根拠で犯人に仕立て上げられ、人生の大半を権力の横暴によって奪われてしまったという人が何人もいました。

≪じゃあ、再審請求を起こせばいいじゃん≫

・・・とはならないんですね。
何故なら、一度判決が出た裁判がひっくり返るという事は、「検察の誤り(あるいは嘘・・・)」が白日の下に晒されてしまう事にもなるから。

いくら「三権分立」とは言っても、裁判所自体も同じく一度出した判決を覆すのは気持ちがいいものではないため、検察に寄るとまではいかなくても、やはりこういうケースでは慎重になります。
こうやって「再審請求」のハードルだけがどんどん高く吊り上げられてしまうんですね・・・。

≪再審請求ではなく、新規の裁判を起こせば・・・≫

新たに起きてしまった事件の審理を行うにあたって必要な「手続き」の中に、過去の冤罪事件の因果関係がどうしても避けられない状況になったとしたら・・・。

これは以前観た「スリーパーズ」とも通ずる戦術かもしれませんが、いわゆる「肉を切らせて骨を断つ」っていう戦法ですよね。
これを法廷でやるってのも中々リスキーではあるんだけど、唯一「一発逆転」が狙える一撃になる可能性もある方法ではあるかな(本当にやろうとするなら相当綿密に作戦を練らないと、検察も裁判官もバカではないので)。

日本で作ったからキャストに「アイドル臭」という軽さが残ってしまったけど、これを海外で作ったらそれなりに面白い映画が作れそうなくらいの、テンポのいいミステリー。

裁判ものの割に裁判シーンに迫力がないってのも何だかな~と思いつつ「必ずしも劇場で観なければ!」っていうほどではないにしても、でも映画館で観たことを後悔するような映画ではなかったなって感じました。

「隙間埋め案件」のつもりでハードルをかなり下げたのも良かったのかもしれないけど、それがなくてもそこそこ楽しめたと思います。

一番のハイライトは杉咲花の絶叫&高笑いかな。
(お~覚醒したぞ)って思わずガン見しちゃった(笑)
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