HiromiA

almost peopleのHiromiAのレビュー・感想・評価

almost people(2023年製作の映画)
3.6
冒頭と最後に4人兄弟での会食シーンがあるけど、いたって普通の兄弟姉妹にしか見えない。それなのにそれぞれ感情の欠落があるという。各エピソードはほぼファンタジー。一部の感情の欠落があったって、長いこと生きてくれば他者との相違を自覚し自分の欠落を長所として前面に押し出すか、それを隠していい具合に補完して生きていくような気がする。自分が喜びを感じなくても他人の喜びを知ることが出来るのだからシナリオ上でハッピーエンドは書けるでしょう。そこをほのぼのしたファンタジーに仕上げられるのはさすがの横浜監督です。怒りを感じないことは社会生活ではあまり不利にならない気がするけど、それをネガティヴなものと捉えることに違和感を抱かせない石井監督もすごい。レボルのアプリによって企業の残業時間やハラスメントを指数化して可視化するってすごい。こんなアプリがあったら、就職とか商品選択とかにかなり役立ちそうだなあ。商品のバーコードをスキャンすると、製作工程がすべて見えちゃって、かかわった企業の社会貢献指数とか、化学物質の混入具合とかそういったものが見えるようになるとかなり恐ろしい世界になりそうだなあ。楽しさを感じなくても楽しい振りはできそうだよね。小中高とクラスメイトとの交流の中で、喜びは感じないけどみんなが喜ぶのはどういう時なのか、その時どういう表情をするのかぐらいは学習してきているはずなので、恋人にその成果を見せることだってできたはずなのに、自分をさらけ出しているっていうことは本当に恋人エミを思っていたんじゃないだろうか。しかし喜びを感じられないことをなぜ告白しない。まあでも最も無害な気がした。最後寂しさを感じないから寂れた港町の旅館でも大丈夫というのがいまいちだったけど、同病相憐れむ形での共同生活はある意味ファンタジーかな。でも寂しさを感じないことをファンタジーに昇華させるのが一番難しかったのかな。かなり生活感が滲み出ていたし、娘の感情欠落を気付けなかった父親が一番寂しかったように思えてしまった。全体としては感情など一部欠落していても、この世の中で生きていくのに何の不自由もないということなんじゃないかな。最後の4人の会食がそれを物語っていた気がする。
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