ぶみ

夜が明けたら、いちばんに君に会いにいくのぶみのレビュー・感想・評価

3.0
君と見上げる空は、泣けるほど美しい。

汐見夏衛が上梓した同名小説を、酒井麻衣監督、白岩瑠姫、久間田琳加主演により映像化した青春ドラマ。
マスクが手放せない女子高生と、絵を描くことを愛する男子高生が、お互い惹かれ始める姿を描く。
原作は未読。
主人公となる銀髪の高校生・深川青磁を白岩、青磁のクラスメイト・丹羽茜を久間田が演じているほか、箭内夢菜、今井隆文、上杉柊平、吉田ウーロン太、鶴田真由等が登場。
物語は、自由奔放でクラスの人気者である青磁と、かたやマスクを手放せず、周囲の空気ばかり読んでしまう優等生の茜という、性格も見た目も正反対な二人を中心に展開。
特に冒頭、青磁が茜に対して、告白するのかと思いきや、いきなり嫌いである旨を告げるという衝撃的なシーンでスタートし、この後、二人がどうなるのか気になって仕方なくなってしまうため、まさに掴みは上々。
ただ、いかんせん、人物描写にあまり時間が割かれていないせいか、例えば、家では茜が時間に追われ、帰りが遅い母親に代わり妹の世話をしなければならないのだが、それが原因でストレスが溜まっているかどうかが、今一つ伝わってこなかったりするとともに、これは青磁演じる白岩の演技力が弱いのか、はたまた脚本が原因なのか、唐突な展開が散見されるのが残念なところ。
また、終盤廃園となった遊園地が登場し、その雰囲気は抜群だったのだが、廃園なのに、何故かバルーン投光器による照明が点いているというご都合主義満点なシーンがあったのには詰めの甘さを感じた次第。
反面、茜がマスクが外せないという設定は、「顔パンツ」とも形容されたコロナ禍を想起させるものであり、なかなかタイムリーであるし、徐々にその原因や二人の過去が解き明かされていく展開は、瑞々しい二人の演技と相まって上々な仕上がり。
前述のように、白岩については、主役を演じるには少々早かったかなと感じたのが正直な感想ではあったものの、そこは今後に期待したいところであり、茜の世界が徐々に彩られていく様を応援したくなるとともに、その茜演じる久間田が誰かに似ているなと、ずっと思っていたら、若かりし頃の久宝留理子を思い出した反面、白岩目当てなのか、私以外の観客は全員見事に若い女性ばかりであったため、おじさん一人で観るには、勇気がいる一作。

あるけど、時間が永遠に止まっている場所。
ぶみ

ぶみ