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夜が明けたら、いちばんに君に会いにいくのinotomoのレビュー・感想・評価

4.5
高校2年生の茜は、クラスの委員長を務める女の子。クラスメイトを気遣いながら、明るく振る舞っているが、実は過去の辛い出来事が原因で、マスクが手放せない。ある日、クラスメイトの青磁に「お前のことが大嫌い」と言われショックを受ける。青磁は、仲間と群れたりはしないが、クラスメイトからも一目置かれる人気者で、絵を描くのが得意だった。ある出来事がきっかけで、茜と青磁は、次第に距離を縮めていく。そして茜は青磁に自分の秘密を打ち明けることができ、青磁の前でだけ、マスクを外すことができるようになる。そんな中、茜は思いがけず青磁の秘密を知ることになり驚く。
監督は酒井麻衣。

人気小説を映画化し、JO1の白岩瑠姫と、久間田琳加がW主演を務める青春ラブストーリー。と言っても、恋愛色はそこまで濃くなく、青春映画としての色合いの方が濃い印象。私はJO1オタクなので、白岩瑠姫くん目当てで見に行ったのだけど、ありがちなアイドル映画ではない秀作。美しい音楽と映像に彩られた魅力的な作品で、茜と青磁の距離感が縮まっていく様子や、抱えている心の傷が明らかになっていく様子など、キャラクターの心情が丁寧に描かれていて、それが見ている人の心に違和感なく響いてくる。主演2人も好演。プロット自体はよくあるものだけど、ただのアイドル映画と侮らないでほしい。

前半は茜の日常や、抱える心の傷などに焦点を当てている。家庭でも学校でも良い子で居続けていて、本心を誰にも明かせない。文化祭の写真撮影など、ふとした場面で感じる茜の孤独に共感できるし、時に自分自身を傷つけてしまう茜だけど、痛いキャラクターではなく、健気で共感できるキャラクターになっているのは、脚本のおかげもあると感じた。マスクをつけながら、感情の機微を表現した琳加ちゃんがとても良かった。
そして、青磁との距離が縮まっていくその過程。時にぶつかりながらも、お互いにとってのいちばんになっていくその様子が自然で、心を動かされる。

後半には青磁の抱える秘密が明らかになり、それまでの青磁の言葉や行動の意味に気付かされる。演じていた白岩瑠姫くんが、あまりに青磁そのもので、画面に映る青磁がとにかく美しかった。彼が映る場面をずっと見ていたくなるほど。仕草や佇まい、彼の周りの空気も美しく見えるほど。瑠姫くんが相当努力したのだろうなと思うと、それだけで泣けてくる。

絵が映画の中の重要なアイテムなだけあって、色にこだわっている部分がたくさんある。青磁と茜の名前が色に由来するのはもちろん、主題歌の「Gradation」の「青と混ざる茜色」というフレーズ、そして歌詞全体が映画とすごくマッチしていて、これも秀逸。JO1の歌唱も素晴らしい。

JO1のファンだけでなく、映画ファンの方にも高評価を得ているようですごく嬉しい。多くの人に見てもらいたい秀作です。
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