Punisher田中

TALK TO ME/トーク・トゥ・ミーのPunisher田中のレビュー・感想・評価

3.9
母と死別し、母の死の悲しみを引きずっているミアは憂さ晴らしに巷で流行っている呪物を使った降霊術パーティに参加するのだった...
「悲しみを紛らわせたい」その一心で揚々と降霊術にチャレンジするミアだったが...

実は10/16の最速試写会にご招待いただき、その際に鑑賞させていただいたのですが、さすがに上映前に長文レビューをぶつけると人によってはかなり不親切だよなということで、公開した段階でレビューを投稿させていただきました。

大ヒットも頷ける、隅々まで手が掛かった丁寧なホラーという印象だった。
主人公の境遇や周囲の人間をこれから起こる展開と綺麗に重ねていて、キャラクターとストーリーの結びつきによって生まれる化学反応、皮肉や因果だったり依存によってネガティブなテンションで真っ逆様に落ちていくこのスピード感は病みつきになること間違いない。
ティーンが危ない橋を渡るというのは大人へ為る通過儀礼で、元来「もう2度とやらない」で済むものが「もう後戻りは出来ない」になっていく過程がエンタメホラーにはなかなか無い重みを与えていて良かった。

今作の面白い部分は降霊術が依存の対象となっているという点で、安全圏で暮らし、ほぼ何不自由ない生活を送る健康な人にとっての「死」はエンタメでしかほぼ接することがない。
本来恐ろしいはずの「死」が映画作品や小説、漫画などのエンタメによってだんだんと軽いものとなっていき、次第に「死」と隣り合わせになること自体にすら快楽を感じてしまうし、笑いにもなってしまっていることもある。
改めて僕たちの世代は「死」に対してのイメージがかなりぼやけてしまっていて、気づけば「死」になんらかの依存をしている様に考えさせられた。
実際、死に救いを求めようとしたり、何気ない会話で平気で死ね!や死ぬわ!を冗談言葉で使ったり、口癖が「死にたい」になったりと僕ら辺りの世代から「死」をかなり軽く見てしまっている様になった気がする。今作は死と依存を見事に結びつけたZ世代にこそ通ずる快作だと思う。

こうしたイメージを持った人間だからこそ「死」について改めて考えさせられる作品だった。そのくらい、死の恐ろしいイメージが頭からこびりついて離れない。
どうせラストはハッピーになってしまうエンタメホラーに飽き飽きしている方にはオススメの容赦ないホラー!
個人的には超オススメ!