06

TALK TO ME/トーク・トゥ・ミーの06のレビュー・感想・評価

3.8
霊と手を握る#90秒憑依チャレンジに魅せられてしまった、母をなくした寂しいティーンエイジャーが、周囲との人間関係ぶっ壊しながら地獄への道を突き進む映画。

「手を繋げば霊がランダムで現れる」
これは「誰とでも容易く繋がれるSNSのメタファー」だという意見を見かけた。僕も同様に感じる。
主人公ミアは母親が死んで喪失を抱えている。故に人恋しく、コミュニティへの参加に必死になる。その結果霊に取り憑かれ、周囲の信頼を裏切り、縁を断ち切り、自ら孤立への道を突き進むのだ。

「自分が孤独に思える」
とミアは作中で告白する。
そんな心の穴を抱える人間に、霊(悪い者)は付け込み、周囲こそが悪だと断じて孤立させようとする。だからこの映画は「寂しさなんかに振り回されていたら、自分の命で払う事になるぞ」と警鐘を鳴らしているのかもしれない。

それを補強するように、この映画では人の縁が薄い。家族しかり、恋人しかり、友人しかり。
父は娘に隠し事をし、友達は彼氏との仲を疑う。親は迎えに来ない。みんな自分の事で精一杯で、ミアに寄り添う余裕がない。
表面上はフレンドリーだが、「あなただけは味方だと思っていたのに」「そんな奴だと思わなかった」と相手を脅したり、その手を振り払ったりする。
特に大人への信頼は薄いのか、90秒チャレンジで大事が起きた時、誰一人として「大人に相談する」という選択肢を出さない事に虚しさを感じた。
「本当の友達なら止めていたはず」
というセリフが、この映画の寂しさを象徴している。


雑にまとめると、大変メンヘラに厳しい映画だった。
強引に救済を描かなくていい所が、ホラーの良さであり、ズルいところでもあるが……。寂しい子どもたちがこの映画を見て、我が身を振り返り、生活を改めるか考えると。明確な救いが描かれない分、難しいかもしれない。
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