萩原くわがた

TALK TO ME/トーク・トゥ・ミーの萩原くわがたのレビュー・感想・評価

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皆からダメって言われてること危ないって言われてることって色々あるんだけど、大体の場合その禁忌と背徳は人と共有することで結束を強め、スリルが快感を呼ぶ。
しかし、”それ”がなぜダメなのかはよく理解しなきゃいけない。この映画は”それ”がよく分かってない若者を描いた物語。

若さ故の愚かさの描写が生々しい。単なる人間の悪意や悪党の自業自得ならこんなに恐ろしい気持ちになることはないと思うんだけど、本作の主人公は素直で、若くて、悩んでいて、過去に囚われていて、思いやりがある。
そんな彼女に組み合わさる「死者を呼び出す」という行為。自分でも自分を制御できず不本意に巻き起こす地獄。しかしそれは若さ故で仕方なきことなのだ。でもこれではあまりにも……あまりにも……。

作中の恐怖演出はドン!とくるものもあればジワジワと忍び寄るようなもの、嫌な予感を強烈に連想させるもの、ダイレクトに視覚的な恐怖=血まみれ的なものも。
ホラー映画の歴史が生み出した様々な恐怖演出が主人公の感情とリンクして使い分けられ、恐怖の感情移入が止まらない。
滑り落ち続けるような物語はラスト1秒まで見事で、全体的な完成度がめちゃくちゃ高い映画だな!と感心してしまう。

A24最高ヒットと言われるのも納得の超良作。見終わった後の余韻も素晴らしい。