たく

妖花のたくのレビュー・感想・評価

妖花(1940年製作の映画)
3.4
行く先々でトラブルの元になる妖艶なクラブ歌手と海軍士官のひとときの恋路を描いてて、マレーネ・ディードリッヒの妖しい魅力が画面いっぱいに溢れてたね(歌唱力は今一つだけど‥)。ジョン・ウェインがウブな青年を演じてるのが違和感ありまくりで、終盤の大乱闘のドタバタ感もあいまってB級臭さの漂う作品に仕上がってた。

彼女の現れるところ必ず暴動ありというトラブルメーカーのビジョウが、度重なる追放処分の果てに昔滞在してたスマトラ島まで流れ着く。ここで島に停泊してた軍艦に乗るブレント海軍中尉と知り合い、お互いを意識していく展開。住む世界の違う二人の禁断の恋という良くあるパターンで、ここに街のチンピラのアントロが蛇のような執念深さでビジョウに付きまとっていくのが不気味。

ビジョウが男どもを次々手玉に取ってその場にいる全員を虜にするのがちょっとカルメンみたいで、彼女に狂って海軍を追い出されたネッドが彼女の用心棒として仕えてるのが悲しい。ブレントは海軍のサラブレット的存在で将来を嘱望されており、ビジョウのような下賤な女とは釣り合わないということで、海軍長官から直々に関係を断つよう告げられるのが「椿姫」を思わせる。でも素直に身を引く椿姫のヴィオレッタと違い、ビジョウがブレントの結婚意思を知って舞い上がっちゃうのが可愛くて、おそらく彼女にとってこれが初めての本物の恋だったんだろうね。

終盤の大乱闘は次々展開するアクションの迫力がすごいんだけど、チープなBGMがドタバタコメディ感を強調してて、収拾のつかない締まりのなさを感じた。ラスト、船の軍医と腐れ縁のように傷を舐め合う感じでフェードアウトするビジョウに漂う哀愁がウルっとさせる。監督のテイ・ガーネットは知らなかったけど、ヴィスコンティも映画化してる「郵便配達は二度ベルを鳴らす」の3度目の映画化の監督なんだね。
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