近本光司

12日の殺人の近本光司のレビュー・感想・評価

12日の殺人(2022年製作の映画)
3.5
彼女は友だちの家からの帰路で、何者かに突然ガソリンを被せられ、見るも無惨な姿で焼死する。誰が、なぜ殺したのか。彼女のほうに殺される原因はなかったのか。警官の男たちはさまざまな仮説を立てて捜査を進めるが、一向に真相に辿り着かない。彼女の周りにいただれもが疑わしく、また同時にシロでもありうる。この社会ではただ女であるというだけで十分殺される理由になるじゃないか、これ以上死者を辱めるなと、度重なる取り調べに嫌気がさした彼女の親友は涙を落とす。もう少し撚りがあってもいいけれど、これはまさに正統なフェミニズム映画で、わたしは支持したいと思った。この痛切な事件とは裏腹に秋のグルノーブルの街並がうつくしい。それだけにいっそう痛切な死。