リコリス

旅するローマ教皇のリコリスのレビュー・感想・評価

旅するローマ教皇(2022年製作の映画)
4.4
人間が地球にいることが許されますように。どうか害悪ではないように。

教皇の旅のアーカイブ映像に、その時(時には過去)のその場所の映像が追いかけるように重なる。

自分の発言が傷つけた人への謝罪。聖職者性虐待や宗教による先住民虐待への謝罪。他の宗教の指導者との対話と寛容確認。ユダヤ人やアルメニア人の虐殺への鎮魂。ハリケーン被害のフィリピン、戦乱のイラク、シリア、ウクライナへの平和な日常を願う祈り。言葉なきヒロシマでの祈り。

この人の行為が、平和への祈念から次第に私たちの存在への赦しを乞い願うように見えてくる。

教皇が嬉しそうだったのは教え子的な神父がスラムの人々の暮らしを家を立て教育で変えていく姿。国際宇宙ステーションの乗組員との交流。乗組員は人類は皆が宇宙から地球を見るべきで、静謐で美しくて薄い大気圏に覆われている、はかない存在であることを語る。

カインのように「知ったこっちゃない」と突き放したり対立したりしないこと。そのカインにも赦しを願う。余りに罪深い人類が、ここに、これからも居てよいのか。その願いを必死に祈り続けるダークサイド行脚のような毎日。

教皇だから、こう生きる…でなく、こう生きている人だから、教皇として慕われ信頼されるのだと思う。
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