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ドミノのTKLのレビュー・感想・評価

ドミノ(2023年製作の映画)
3.6
ロバート・ロドリゲス+ベン・アフレック、この初めての組み合わせに対しては、作品そのものの是非の前に、ある種の“信頼感”があった。
それぞれの監督作品、出演作品において、当たりハズレは確実にあるけれど、両者とも映画を心から愛する“映画人”であり、その二人が組んで「仕事」をする以上、明確なコンセプトを持って取り組んでいるだろうことを、一映画ファンとして知っているからだ。

「インセプション」や「マトリックス」をはじめ、アイデアと世界観の構築に対して、“既視感”は否定しないけれど、ロバート・ロドリゲス監督作品らしく良い意味でも悪い意味でもB級テイストに振り切った映画作りには潔さを感じるし、好感が持てた。
唐突に突きつけられる恐怖描写や、ストーリー展開から醸し出される気味悪さ等、既視感を感じつつも、この監督らしい独自性は確実に存在していたとも思える。
ストーリー的設定に伴うキャストやメキシコのセットの“二次利用”など、低予算を逆手にとった演出的なアイデアも見事だった。

そして、巨匠監督の作品や超大作に出演すればしっかりと存在感を放つ役どころを演じる一方で、こういうB級ジャンル映画でも、ある意味きちんとそのテイストに合った主人公像を演じるベン・アフレックは、やっぱり信頼できる映画俳優だと思う。
この映画はストーリーの性質上、終始主人公の虚ろな白昼夢ような視点を持って描き出されるが、その中で、愚鈍と強者の間を行き来するような絶妙な主人公像を演じており適役だったと思う。キャラクターの性質や秘められた真相から、「トータル・リコール」のシュワルツネッガーも彷彿とさせた。
(今思えば、2012年にリメイクされた「トータル・リコール」の主演はコリン・ファレルじゃなくて、ベン・アフレックの方がベストキャスティングだったなあと、関係ないことを思った)

ストーリー的には決して完成されたものではなく、ツッコミどころ満載といえばその通りだろう。クライマックスの顛末などあまりにも強引でご都合主義であることは否定しない。
けれど、キーパーソンとなる主人公の娘の“眼力”一発で、結末を納得させてみせたことで、このトンデモ映画はちゃんと成立していると思えた。

エンドクレジット中の描写は、蛇足にも思えなくもないが、この先のナンデモアリ展開の大風呂敷をきちんと収束し得る構想が存在するのならば、続編にも期待したい。
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