「沖縄映画まつり」にて内地では初上映となる『島に還る』を鑑賞。
私は八重山には一度だけ行ったことがあるけど、石垣、西表、竹富、由布だけで、小浜島には行ったことがない。
私のベースはもう30年近く通っている宮古島なので、「山」があるのが新鮮。八重山は険しい。
『島に還る』
タイトルのように、本作のエピソード毎の主人公は、何らかの理由で「島に還ってきた」人。
おじさんがゲストハウスを営む小浜島にお手伝いにやってきた女子高生。
訳ありで子連れで島に還ってきたシングルファーザー。
亡き妻との思い出の島に還ってきた男(尚玄)。
それぞれのエピソードがオムニバス形式で進みながら、小浜島という舞台で交差する。
演出でおもしろいのが、最初「モキュメンタリー風にしたいのか?」と思った作為を感じさせない演出方法。
主人公だけ放り込んで周りは島のおじいやおばあだったり、八重山の空気の中で俳優を台本で縛らずに演技させる撮り方は、同じ尚玄さん主演の『すべて、至るところにある』のリム・カーワイ監督に通じるところがある。
島から出て行って還ってこない者もいるし、還ってくる者にはそれぞれ何かしらの事情がある。
ここに出てくるそれぞれのエピソードの主人公は、そんな離島の「あるある」なので、きっと誰かには共感できるんじゃないかな?
特に「見合いする」って噂が、あっという間に「結婚するんだって」に変わって島全体に広まっちゃうところなんて、すごいよくある離島アルアルで笑った。
さまざまな思いを抱えて島から帰って行く者、いろんな思いを抱えて島に残る者。そういう人の往来が島をつくり、島はこれからも生きていく。そんな島と人を描いた心温まる作品。オススメです。
*私はよく宮古の友人に「内地に出てって盆と正月にしか帰ってこない子供より、私は島にいるよ」などと言っているが、私は島から見れば夏にやってくる季節労働者であり、島の映画館を応援しているおっさんだ。そんなことも20〜30年続けていれば、夏に「還ってくる」人には成れているんだろう。そんなことを感じさせてくれる作品だった。