TAK44マグナム

プロテクターのTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

プロテクター(1985年製作の映画)
3.4
暴れん坊刑事、香港へ還る。


「バトルクリークブロー」に続く、ジャッキー・チェンのハリウッド進出第二作。
監督が「エクスタミネーター」で知られるジェームズ・グリッケンハウスなのですが、アクションシーンの撮影などで2人は激しく対立、結局のところアジア圏では、ジャッキーが自腹をきって追加撮影、再編集を施したバージョンが上映されました。
つまり、本作にはグリッケンハウス版とジャッキー版の2バージョンが存在するわけですね。
現在、NETFLIXで配信されているバージョンはグリッケンハウス版です。


腕っ節が強いジャッキーは危険なニューヨークの治安を守る型破りな刑事。
相棒を失ったジャッキー刑事は、新相棒と共に、香港の麻薬王に誘拐された富豪令嬢を救うために海を渡ります。
生まれ故郷の香港で、ジャッキー刑事はヴァイオレンスな捜査活動を開始!
しかし、意外な裏切り者、協力者の死、強力な空手用心棒など、麻薬組織壊滅までのハードルは思いのほか高く、ジャッキー刑事は最大のピンチを迎えるのですが・・・!


正直、グリッケンハウスはアクションシーン自体にそこまで興味がないような気がしますし、実際、「エクスタミネーター」も「ザ・ソルジャー」もアクションは淡白で面白くありません。
なので、そこには期待しないで、グリッケンハウスが目指したという「ジャッキー版ダーティハリー」がどんなものなのかと気になって鑑賞した次第です。

しかし、ダーティハリー風味は冒頭のニューヨークぐらいなもので、香港に舞台が移ってからはアクション押し一辺倒な、どちらかというとリーサルウェポンみたいな映画になっちゃいますよ。
しかし意外や意外、言うほどアクションがつまらないなんて事はなく、派手なバイクジャンプや、ロケットランチャーまで発射、爆発する、テキトーなドラマパートをテキトーに挟んだだけの娯楽要素満載のアクション映画として完成していて驚きました。
ほんとにこれ、グリッケンハウス演出?
ジャッキーとの相乗効果が良い方向に働いたのでしょうか?
まさしく80年代なこの出来栄えでもジャッキーは大いに不満だったわけで、彼特有のコメディ要素が足りなかったのがいけなかったのかな・・・?

サウスブロンクスでのロケシーンも良いですけれどね。
いきなりマッドマックス2みたいな世紀末な格好した連中がトラック強盗をはたらく場面から始まるのですが、あのパンクスたちはビール飲ませてあげるからって集めた素人さんたちって話は本当でしょうかね?
酒場強盗を高速ボートで追いかけるチェイスシーンも、最後は大爆発で思わず笑みがこぼれます。

ヒロインであるムーン・リーをはじめ、もったいない使われ方のキャラクターが多いのはどうかと思いますが、80年代刑事アクションが好きなら楽しめる大味さこそが最大の魅力。
だいたい、誘拐された富豪の娘を取り返すというプロット自体、途中で破綻していますからね(汗)
しかも、話を展開させるために占い師を出して、この先どうしたらよいのかを占いで語らせてしまうという暴挙にでますよ!
マジで最初から最後まで大雑把すぎる!

因みに、サリー・イップはジャッキー版にしか登場しないヒロインらしいです。
思うに、ムーン・リーがジャッキーと本格的に絡むことがない(居なくても成立するヒロインですし)のが不満だったのでしょうか。

それと、敵の麻薬工場の描写がわけわけらんのもジャッキーが嫌がった理由のひとつですね。
なにしろ、何故か全裸女子たちが作業しているのです。
どうして全裸なのか全く説明がないし、オッパイどころかヘアまで丸見えだし、本当に意味が分からない(汗)
しかも、けっこう執拗に全裸女子が働くカットが長い。
グリッケンハウスの趣味なのか?
もしそうなのだとしたら、ただの変態じゃないの!
とにかく、ジャッキー版では全裸女子作業員はいなかった事になっています(苦笑)


初期の、中国拳法を扱った一連の作品とはまた違った、ちょっとだけハードなジャッキーを楽しめる一作。
ずっとハードボイルド風味でも良かったのですが、香港での水を得た魚のようにアクションをこなすジャッキーを見ると、やはり安心できますね。
ただし、ジャッキーがノレてないのはアリアリなので、あまり動きにキレはありません。
そこが残念。


NETFLIXにて