三隅炎雄

無頼漢仁義の三隅炎雄のレビュー・感想・評価

無頼漢仁義(1965年製作の映画)
4.2
渡辺祐介監督、下飯坂菊馬・野上龍雄脚本。鶴田浩二が特攻隊の生き残りで今は道路工事の現場監督を務める主人公を感動的に演じる。マキノ雅弘『日本侠客伝』シリーズの高倉健を鶴田に変えて現代化したような労働者たちの物語だが、現代が舞台なので当然人情劇の枠には収まらず、高度経済成長期を一番下で支えながら捨て石にされていく貧しい労働者たちの心意気と無念の物語が、仁侠映画の形式とぶつかり合いながら熱い共感を持って描かれている。敗戦で虚無に陥った元特攻隊が、紆余曲折あって愚連隊からなんとかカタギになったものの、今度は(お国のための)道路工事で目下の人間に無理な突貫工事させて死なせてしまう、その悲劇の繰り返しが痛ましい。骨箱のように工事ヘルメットを膝に抱える志村喬の姿が心に焼き付く。
これは知られざる秀作だ。高松英郎が、鶴田を慕う流れ者の荒くれ人夫役で素晴らしい演技を見せる。鶴田と藤純子の悲恋はいかにも野上龍雄の味。出演も兼ねるアイ・ジョージの主題歌も任侠映画として異色で聞きものだ。
三隅炎雄

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