あさ

窓ぎわのトットちゃんのあさのレビュー・感想・評価

窓ぎわのトットちゃん(2023年製作の映画)
4.5
言わずとしれた黒柳徹子の大ベストセラー原作
はるか昔に読んだ記憶がある程度でストーリーはほぼ覚えていない状態で鑑賞
予告から思い描くストーリーとはぜんぜん違う、わけでもなく前半は間違いなくそのような無邪気でヤンチャな子供のお話だったが、終盤に向かって行くにつれどんどんと前半の楽しく賑やかな教室からは遠のいていく

絶対に間違った喩えだが、『アイアム・ア・ヒーロー』1巻のような日常がどんどんと侵食されていく恐怖、それがスクリーンに映し出されていた
子供の目線ではわからない本筋には絡まないような細かな描写も使って、戦争が近づき、そして生活に影響を与えてくることを伝えてくる
太平洋戦争前の家も食事も衣服もある恵まれた豊かな生活から一転、戦争が始まると食事も満足に取れなくなる
トットちゃんが走り出したあたりからラストまで、気がついたら涙が止まらなかった

戦争の恐怖を描いた作品のように書いてしまったし実際にその側面は間違いなくあるが、それだけの映画でもない
子供をとても大切に思ってくれている小林先生がいたからこそ今の黒柳徹子という大きな存在がいるのだろうと思うし、最後まで消えることのないその情熱と優しさはスクリーンを通して痛いほどに伝わってきた
泰明ちゃんとのシーンもずっと楽しそうで、トットちゃんに影響されながらハンデがあっても同じように楽しもうとする心がみえた
前半の楽しい日常を丁寧に描いているからこそ後半との対比にもなっているのだけれど
端々まで作り込まれた、時代の空気感や絵のタッチを変えて表現される幻想的な空想シーンまで含めたアニメーションの力をみた

ゴジラ-1.0を観た今、スクリーンで燃え盛る空襲の跡を観ることに意味があったように感じる
劇場で予告を観たときは「今トットちゃんやるんだ」としか思っていなかったけど、むしろ今だったのかもしれない
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