きねぼっち

窓ぎわのトットちゃんのきねぼっちのネタバレレビュー・内容・結末

窓ぎわのトットちゃん(2023年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

クライマックスの演出がキレキレですごい!!!
あと、子供が主人公の映画はだいたい子供の夢想をファンタジックなトリップシーンとして挿入しているが、本作は三回も素晴らしいトリップシーンがあっておトク。

にしても、クライマックスシーンだけでなく、そこまで盛り上げるテクもすごかった。

ヒヨコのエピで、トットちゃんは世話好きな性格であり、ヒヨコが死んだことで死を理解したという伏線になっている。
つまり、ポリオの男の子と仲良くしてたのは、たまたま行きがかり上のことではなく、世話を焼くのがうれしく、楽しかったのだ、と察せられるわけです。

クライマックスで、トットちゃんはぬかるみの水たまりを飛び越えてゆくが、ついにひときわ大きな水たまりに飛び込んでしまい、ビチャビチャになる。
これまで何度もつらいことが起こりそうになっても、両親や先生が守ってくれたけど、ついに絶望に追いつかれてしまうわけです。
が、そこに先生が亡くなった男の子の遺品を持ってくる。
泥水でグチャグチャになっても、立ち上がることはできるし、それは大事な人の思い出によってなしうるのだ、という主張がビンビン伝わってきていると勝手に感動!

男の子の死以降のトットちゃんは見違えるほど空気の読める利発な子供に一変。
しかし、これはトットちゃんが気づきを得て成長、立派な大人になりました、という話ではないと思う。
トットちゃんが奔放でいられた子供時代は、軍国化によってムリヤリ終わらされてしまった、と言う結末と勝手に確信。

ラスト、列車からチンドン屋を見かけた気がしたトットちゃんは、赤ちゃんを抱いているので、列車から落ちずに済んだ。
トットちゃんを大人たらしめているのは守りたいものであり、また、以前はチンドン屋を呼ぶことは退学させられるレベルだったのが、大日本帝国では死に等しい失態になりうる、ということだと思われる。

あと、トリップシーンもそれぞれ、昭和レトロ感を取り入れており、色彩豊かで最高でした!
特に三つ目の不穏さはすごく、昔の子供向け絵本やNHKの影絵、人形アニメなどのそこはかとなく不気味感漂う雰囲気がすごく出てた!

そう考えると、背景が水彩画的なのも、キャラのチークが濃いのも「部楽俱女少」などのイラスト的な画風なんでしょうね。

それから、黒柳徹子のナレーションで、校舎が焼けたとき・・・先生の愛情は戦災よりも勝っていたのです・・・的なことを言っていたけど、あのシーンの先生、目が光ってて、明らかに怒っていたよね。
ただ子供にやさしいだけでなく、そうする環境を作るために、先生は戦っているという一面も取り上げられていて感銘!

余談です。
にしても、ポノックのラジャーよりこっちのほうがよっぽどジブリっぽくてちょっと失笑。
火垂るの墓のイメージがあるからかもしれんけど・・・あれもクライマックスの演出がすごかった。
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