汽笛の音で目を覚ます

窓ぎわのトットちゃんの汽笛の音で目を覚ますのレビュー・感想・評価

窓ぎわのトットちゃん(2023年製作の映画)
4.8
いやもう信じられないぐらい泣いた。めちゃくちゃいい映画じゃないか。

戦時中の話だから、ポスターのような明るいだけの映画ではないと分かっていたけど、完全に期待と想像を超えてきた。自分の中では間違いなく傑作級の映画の1つになりました。

ノンフィクションなので、派手な展開はないかもしれないけど、本当に1つ1つのシーンに心が揺れた。

好きなシーンは無数にあるけど、ネタバレにならない範疇で触れるなら、予告でも流れた校長先生の「君は、ほんとうは、いい子なんだよ」というトットちゃんに向けた台詞はかなり印象的。これは子供からしたら生涯の大切な言葉になる。

それ以外にも、本質的な人の優しさだったり、優しさ故の厳しさだったりを、たわいもない日常の中から学んでいくトットちゃんを見ながら、自分自身の子供への向き合い方も深く考えることができた。

もちろん映画が進むにつれて、徐々に聞こえてくる戦争の足音に胸が苦しくなってくるんだけど、それでもあくまで基本的にはトットちゃんの目線で進んでくのも良かった。

だからこそ結果的に戦争というものの描き方も、色んな対比を使いつつ、説明的にならないように表現できている。そのおかげで自分の持つ戦時中の日本のイメージもより多角的になったように思う。

また、アニメーションでしか表現できないものもたくさんあった。とても概念的なんだけど、その時の感情が、言葉というものを超えて心にダイレクトに伝わってくるシーンもあって、これを見た後なら、黒柳さんが「アニメでの映画化なら」とOKした意味が何となく分かる。

いやはや、今年ベスト級の映画でした。ぜひ多くの人に見てほしい。