メガネン

窓ぎわのトットちゃんのメガネンのレビュー・感想・評価

窓ぎわのトットちゃん(2023年製作の映画)
2.9
どこのスタジオの誰がキャラクターデザインを手がけているのかわからないが、男も女も子どもも老人も民間人も軍人も、区別なく全員が、ルージュをさし、チークを塗り、アイシャドウをひくこの絵は一体なんなんだろうか。あまりにも独特すぎて、キャラの顔をまともに見れないレベル。はっきり言って気持ち悪い。
物語自体は原作に忠実で非常に面白かったし、背景美術や色彩設定も良いので、この変なキャラクターデザインが余計に邪魔で、つまりもったいない。
どんなに真剣な顔で怒っていても、悲しんでいても、決意を示しても、その男がルージュをさして、アイシャドウをひいていると、下手くそな道化師のようで違和感が酷い。本当に気持ち悪い絵で、良いお話なのが半分以上この絵に対する違和感への対処に割かれてしまい、映画を楽しめなかった。
泣けるシーンなのに、とか、笑えるシーンなのに、とか、全部台無し。
あとコンプライアンスもあるだろうが、明らかに見えるようなカメラワークとカットなのに、生殖器を排した絵を描くと言うのは、まず映画とかアニメとか言う前に、絵作りとしていかがなものだろうか。
コンプライアンスに気をつかうのならば、見えないようなカメラワークにしたり、日差しを使うなりなんなり、性器を隠す方法はいくらでもあるはずだ。明らかな裸を描写しているのに、性差のないマネキンのような裸体を描くことは、酷い欺瞞にしか見えない。戦前の、またトモエ学園という現場の、おおらかな教育性を表現しているシーンだけに、こうした忖度は極めて悪質ですらある。もっと工夫した見せ方がいくらでもできるのに、そうしないと言うことは確信的にこの手法が正義だと思っていると考えられるが、もしそうだとしたら、吐き気がする。

ストーリーが感動的であるのと、何より黒柳徹子さんの自伝を忠実に映画化している制作意欲、それらを支えている映像の説得力、繊細な色使いと幻想的なシーンをダイナミックな描写で描く手法など、評価すべき点はたくさんあるけど、やっぱりキャラクターの顔を観て気持ち悪くなるようなデザインはいただけないよ。