かさま

窓ぎわのトットちゃんのかさまのネタバレレビュー・内容・結末

窓ぎわのトットちゃん(2023年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

始まりは多分昭和15年で日中戦争なんかはとっくに始まってる頃である。トットちゃんが最初に通っていた学校でも児童の教育に軍国主義的なものがある。だがこの頃はまだトットちゃんの奔放さは子どもに対する画一的な教育に勝っていられる。トットちゃんは日の丸の絵の空白に色を塗り、国語の授業よりもチンドン屋の演奏のほうに注意を向けている。
普通の学校では扱いきれずトモエ学園に入学ということになるのだが、そのトモエ学園は自由な校風で、トットちゃんが学園で子供時代を謳歌する様子が序盤は描かれる。
校長の小林先生が子どもの自主性や自尊心を守るためどれだけ腐心しているかというのはトットちゃんの視点からも伝わってくる。町の中に、トットちゃんの暮らしの中に徐々に広がっていた戦争の影響がついに学園の中に入り込んでいるのが見られたときは本当に悲しかった。映画の始めの頃は自由でいられたトットちゃんも、人も物資も減っていく社会や軍国主義に染まった人々から逃れられなくなっていく。
泰明ちゃんの死後の疾走シーンで、トモエ学園とは違う世界を今トットちゃんは認識しているのだということが分かり恐ろしかった。観客がトットちゃんと同じく戦時中の社会を知るシーンだと思う。
原作を読んだことがなかったが、子供時代の中に戦争がある様が書かれているのだろう。戦時を知る黒柳徹子の経験をそのまま描き残すということが大切で、そのように作られているのだと思う。この社会にいつでもある危うさが真摯に描かれた作品だった。
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