地底獣国

窓ぎわのトットちゃんの地底獣国のレビュー・感想・評価

窓ぎわのトットちゃん(2023年製作の映画)
3.9
当初鑑賞予定から外していた自分の節穴ぶりが情け無い(DOMMUNEとBLACKHOLEに感謝)。

トットちゃんの目線を基本に置きつつ、対米戦争へと向かう時期の空気(そこに「高揚感」も含まれている)、その後次第に敗色が濃くなり高まる同調圧力、それに苦しめられる黒柳家と学園のみんな、というのを自然に描きつつしっかりその厭さが伝わる演出は見事としか言えない。

アニメーションの技術的にも、一見で分かる幻想シーンの楽しさや美しさは勿論、日常シーンでのデフォルメとリアルの匙加減も絶妙(特に財布を探すところ)でひたすら感服。

黒柳徹子氏はこれまで映像化のオファーを断り続けていたのが今回「アニメーションであれば」と許諾したとの事だが、そこにはもはや数少ない戦前生まれの人間として、今現在のキナ臭い(「戦前」の)空気を感じ取っている故に改めて映画という形で世に出そうという意志があったんではないか?と勝手に想像。

ついでにもう一つ勝手な想像を書いておくと、本作の始まりが提灯行列というのはもしや、かつて荒井晴彦が「この世界の片隅に」を「民意も戦争に前のめりだった事を描けていない」と批判したのを意識していたのかも?まあでもあの男は本作も映画とは認めんのやろな。
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