よ

窓ぎわのトットちゃんのよのレビュー・感想・評価

窓ぎわのトットちゃん(2023年製作の映画)
4.2
凄い手腕だ。監督はいったい何者だ?
原作をおじゃんにする映画化を何度も見てきただけに、このトットちゃんは有難い。映画化という作業に夢を持てるようになった気がする。

たしかに『窓際のトットちゃん』というエッセイは琥珀糖の箱みたいだった。この映画でそう気付かされた。
あの本は正直さと純粋さの詰まった、キラキラしたエピソードの集合体だった。私はそれを次から次へ、飽きることなくシャリシャリと咀嚼していた。
その体験は、この映画で描かれたとおりの色鮮やかさだったと言っていい。

ただ、原作以上にこの映画が鮮やかに見えるとすれば、理由はおそらくその容赦無さにあるだろう。
泰明ちゃんの動作のひとつひとつ、戦争による不自由のひとつひとつが生々しいからこそ、トットちゃんの笑顔とのコントラストが映える。
そしてまた、自由や寛容を訴える力も強烈になっていると言えるだろう。

繰り返すが、原作の雰囲気を壊すことなくこれをやってのけた手腕には、驚きを隠せない。
よ