晶

窓ぎわのトットちゃんの晶のレビュー・感想・評価

窓ぎわのトットちゃん(2023年製作の映画)
4.5
21世紀に入ってからの日本のアニメはキャラクターの動き、ではなく「仕草」の表現に特化してきたように思う。
幼児を描いたこの作品も、主人公たちは頬は赤く唇はピンクに塗られ、時折どきっとするような色気のある仕草で心情を表現する。
必要とされるリアルさより、一瞬の可愛らしさを重視しているようにさえ感じられるこの演出方針は、日本のアニメがCGに対抗すべく見出した独特の価値観なのだろう。
少し、苦手だ。
少年すら妙に色っぽく、可愛い。なんだかいたたまれなくなる。
この可愛さは本当に必要なんだろうか?

とはいえ、そんなノイズもすぐに消えていく。可愛らしさはこの映画の表現の本質ではなく、残酷そのものに姿を変えていく世界との対比のためのものだった。
主人公トットちゃんがこの物語のあとどうなるかは誰もが知っている。それが緊張感を無くす方向に作用してしまうような作劇方法はいくらでもあったはずだ。しかし、今作は逆に、これら悲劇が結局は一人の女性の豊かな感受性に寄与することがあらかじめわかっていることが、大きな説得力を産んでいる。
足さず引くに徹した演出が、説明的でない脚本が、なんと絶大なマジックを映画に与えたことだろう。
すべてのプリクエルはこうあって欲しい。
そして、最後に別れたあの自由が丘の駅で、少年はなんと言ったのだろうか。
晶