Makiko

窓ぎわのトットちゃんのMakikoのネタバレレビュー・内容・結末

窓ぎわのトットちゃん(2023年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

公開当時、『この世界の片隅に』と比較される場面が多かったように覚えている。
こちらは子どもの視点から見た戦前〜戦中の社会だけれども、随所随所で大人たちの言葉が鋭く刺さってくる感覚がリアルだった。

子どもながらに、言ってはいけないこと、やってはいけないことを大人たちの言葉の端々や表情から感じとる時、何とも言えない気まずさがある。
この映画は全体的に説明が少なく、細かな描写から状況をうかがわせるような表現が多く見られる。
それを象徴するのが開戦を知らせるラジオ放送のシーンと、身体障害のある児童に無配慮な発言をした教員を校長が諌めるシーンだ。
前者は頭ごなしに「ダメなものはダメ」と否定されるような形で、親を通して戦争の理不尽さを知るトットちゃんの表情がつらい。(敵性言語を使ったら罰金として瓶の中にお金を入れる……ってswear jarじゃん!と黒柳家の西洋への傾倒っぷりを感じた)
後者もトットちゃんへの説明がない点では同じだけど、なぜダメなのか、トットちゃんが自分の心と頭で考える機会を(学園という環境が無意識に)与えているように見えた。
最終的にトモエ学園もトットちゃんのおうちも物理的に破壊されてしまうのだけど、その時の状況(誰が壊したか、それを持ち主がどんな表情で見ていたか)がまた対照的で面白い。

トモエ学園で起こる出来事が、その後のトットちゃんの人生にどれだけ多くの影響を与えたのかを垣間見ることができる。
絵柄や雰囲気で子ども向けかと思って観ていない人もいるだろうけど、作りとしてかなりクオリティの高い作品だと思う。
リトミック教育のシーンと雨の街がリンクする場面があまりにも美しい。
思ったことを口に出すことはできなくても、心までは誰にも侵されない。善く、強くあるとはそういうことなのかもしれない。
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