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窓ぎわのトットちゃんのakiakaneのレビュー・感想・評価

窓ぎわのトットちゃん(2023年製作の映画)
3.8
白線以外の道路はサメの泳ぐ海。傘や木の枝は勇者の剣。綺麗な石や貝殻は宝物。友達の手を取って木登りなんてしたらもう気分は崖を登るケインコスギ。
(「ファイトー!」「いっぱーつ!」ってやった人いると思う)
場所も時代も違えど、そんな「かつての子どもたち」(特に大人なしで危なっかしいことをした覚えのある人)に、トットちゃんの日常は懐かしさと在りし日の胸の高まりを甦らせて来る。

大人になると目の前の出来事を想像力や記憶で補えてしまったり、初めて見るものが減ったりして刺激や感動が薄くなってしまうという。
そんな大人から見ればありふれた日常で、トットちゃんやヤスアキちゃんが持てる力を尽くして精一杯取り組む姿に目頭が熱くなると同時に、感受性の豊かな一方で何の決定権も権力もない子どもにとって、大人ですら打つ手もなく変わってしまう世の中はどんなに不安だっただろうと思うと胸が締め付けられた。

《余談》
① 現代で言う「インクルーシブ教育」を実現した学校が戦前にあったことに驚いた。環境や規範を作る側である大人たちの責任・無責任、自負、過ち、葛藤などを見るシーンも多く良かった。

② (戦前の児童書の絵柄なんだそうが)一律でメイクしたようなまつ毛とチークのキャラクタービジュアルが素朴な日常を楽しむストーリーにはミスマッチに感じた。
トットちゃん目線の光り輝いて見える世界を表す為ならキャラクターのビジュアルではなく背景画で表せば良かったのでは。
戦時中のシーンで多少変わるのかと思いきや特に変わらず、黒柳徹子さんが「特に辛かった」と言っていたひもじさを感じづらくさせてしまったと思う。

③当時の「おおらかさ」の形とはいえ、男女混合の裸での水泳シーンには違和感が拭えなかった。
家族で風呂に入るとか、銭湯で他人と一緒になるのと違って学校の授業なわけだし。
しかも脱ぐところから描かんでも…。
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