このレビューはネタバレを含みます
正直なところ、いじめ、自殺、リスカという要素は、聞くだけでお腹いっぱいで、学生映画や自主映画でうんざりするほど扱われてきて、表現としても商業的観点からも、今それを観たい観客はいないだろうとは思う。
それでも、野田監督の映像と音楽が織り成すメランコリックでノスタルジックな慈愛に満ちた世界観はとても好きなので、そのドロドロ要素をどう扱うのかが、逆に気になっていた。
結果、その陰鬱さが後を引くことなく、クレナズムの同名曲になぞらえて、"ふたりの傷跡"が"ふたりの絆"へと終着し、救いのある終わり方だったのが良かった。
母親が謝ってくるのが異常に早過ぎたり、急に病院で男が独白めいた語りを始めたり、直前まで否定的だったクラスの少年が急に協力的になったり、過呼吸が急に治ったりと、細かい突っ込みどころもあげ出したら沢山あるけど、それもどうでもよくなるくらい歌によって心が浄化された。
メインの女優が3人とも、演技も演奏シーンもホンモノみたいで素晴らしかった。
風に波打つあぜ道の画がかなりエモい。