きゅうりのきゅーたろう

ふたりの傷跡のきゅうりのきゅーたろうのレビュー・感想・評価

ふたりの傷跡(2022年製作の映画)
4.4
親友で、人気のトラックメイカーのハルとともに文化祭でバンド演奏をする約束をしていたミナ。しかし、文化祭直前になって突如ハルは自殺してしまう。打ちひしがれるミナの前に現れた転校生のハルカ。人と関わることが苦手なミナだったが、音楽という共通の趣味を通して次第にハルカと仲を深めるも、ハルカから文化祭でバンド演奏をする誘いを受けミナは困惑する…というお話。


舞台挨拶付きで鑑賞

この映画のこと知らなくて仕事終わりにたまたまフラッと寄ったんですが、めちゃくちゃ掘り出し作品でした…!

舞台挨拶のゲストとしてトークをまわしていただいた西尾監督の多様性と多面性の違いの話が実に示唆深く、この映画はその通り多面性を描いていて、それゆえに実感が湧き、ヒヤッとするくらいのリアリティがあったのだと思う。
野田監督と主演の八木みなみさんの過去のある出来事がリンクしたことがこの映画の製作のスタートにあると仰ってましたが、そういった究極の個人的体験をうまく乗っけてることもリアリティに寄与していると思いました。

また、印象的なのはめっちゃ開けた一本道で進む先は見えているのに、その先にいるのが自殺したハルだというシーン。
ここにミナの行き詰まった絶望が表現されていたと思いますし、
ミナには物理的な傷跡、そしてハルの傷跡は金髪であると思いました。
なぜならハルは自身の存在を保証してほしかったのであり、金髪という周りとは違う目立つ格好をすることで存在を喧伝しようとしていたのではと思ったからです。あの金髪はハルの痛みの象徴でもありました。

stop making senseをハルが刻んでいたのも、金髪にするとは=校則を破る=理由・意味を説明しないといけない ものであり、けど、存在の証明の手段に理由なんて付けられないからこそなのではと。

そして知らなかったクレナズムの曲もものすごくハマり、早速ヘビロテです。