MasaichiYaguchi

ふたりの傷跡のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

ふたりの傷跡(2022年製作の映画)
4.1
映像作家・野田英季さんが、自ら命を絶ってしまう子供たちがいる社会の現状と、自身の学生時代の経験などに基づいて手がけた青春ドラマは、魂を奮わせる楽曲と共に痛みと切なさを乗り越える友情を描き出す。
本作の最大の魅力の一つと言える音楽と主題歌を、2018年に福岡で結成され、SNSなどで注目を集める4人組バンド「クレナズム」が担当し、同バンドのボーカル&ギターの萌映さんはキーパーソンとして出演もしている。
親友のハルが文化祭前に自殺し、クラスメートの木崎ミナは自己嫌悪を抱きながら日々を送っていた。
そんな或る日、転校生のドラム演奏者の黒田ハルカと一緒に、ハルが残していた未完成の楽曲を見つけたミナは、それらの楽曲を通して当時のハルの心に触れていく。
そして、ハルの楽曲たちに導かれるようにミナとハルカは文化祭への出演することになり、2人の思い出の夏が始まっていく。
ミナ役は「ミスiD」2020及び2021ファイナリストの八木ミナミさんが、ハルカ役は実際にドラマー&パーカッショニストとして活躍している佐久間遼さんが演じている。
コロナが5類に移行しても社会に未だ閉塞感があり、明日を生きることに絶望している若者が多いこの頃、本作に登場するヒロインをはじめとした高校生たちは、それでも前を向いていこうとする。
彼らにエールを送るようなクレナズムの楽曲が、心の深いところまで響き渡ります。