耶馬英彦

ふたりの傷跡の耶馬英彦のレビュー・感想・評価

ふたりの傷跡(2022年製作の映画)
2.0
 マイナーな映画でも、たまにいい作品に出逢うことがある。手当たり次第に観るのは無駄が多いので、直感的によさそうだと感じた作品を選んで観ることにしている。本作品は、残念ながらハズレの部類だった。
 観客に登場人物の心象風景を想像してほしいのか、唐突感のある無言のアップが長回しで移される。それが何度もあるのが、まずNGだ。無言のアップ自体は悪くないのだが、そこに至るまでの状況が理解できるシーンがあってこそ生きるもので、単にクラスメートが自殺した事実だけでは、観客には何も響かない。日本では毎日4000人が死んでいる。その事実だけでは、心が揺さぶられることはない。関係性や経緯(いきさつ)は、きちんと描かれなければならない。

 主題歌のタイトルをそのまま作品のタイトルにしているだけあって、曲に寄りかかっているところがある。ストーリーに力強さがないし、母親やスタジオの店長など、人物の登場の仕方がいずれも不自然だ。教師の書く黒板の字が薄くて下手なのも変である。
 ナルシズム全開のロック好き少女が独りよがりにジタバタしているみたいな物語で、観ていて引いてしまった。どこかで面白くなるかもと、淡い期待を抱いて観ていたが、最後まで下手なコントみたいな芝居が続いた。やっと終わったかと思うと、主題歌が再び歌われるバンドのシーンだ。流石に辟易してしまった。

 終映後に舞台挨拶の準備がバタバタと始められたが、そそくさとスクリーンを出た。舞台挨拶があるのに帰ったのは初めてである。挨拶してくれる方々に嫌悪感を抱きたくなかったのだ。
耶馬英彦

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