黒猫ぽち

ふたりの傷跡の黒猫ぽちのレビュー・感想・評価

ふたりの傷跡(2022年製作の映画)
5.0
僕は映画を観ると「いい映画でしたー」というばかりで、どこがどう僕の心に響いたのかをうまく描くことができません。だから、本当にありきたりなことしか描いていないのだけど、でもそれが僕の精一杯なので、一生懸命素晴らしい作品に仕上げて世に送り出し、僕に魅せてくださった方々にはこころから「ごめんなさい」としか言えません。ごめんなさいm(_ _)m

そして、この映画「ふたりの傷跡」もそんな映画の一つです。

何が良かったかと聞かれると、それはもう本当にたくさんあって描ききれないのです。描き続けるとキリがなくて、ただただ筋書きをなぞっていくばかりになってしまうんです。だけど、筋書きは上に張っておいたリンク先の公式ホームページを観ていただくほうが確実にしっかりわかっていただけますから、そちらをご覧くださいね。

そういうわけで、僕が気に入った場面を2,3挙げるにとどめましょう。

なんといっても一番かっこよかったのは、終盤のミナ[八木みなみ]とハルカ[佐久間遼]が「ふたりの傷跡」を演奏する場面。とりわけハルカのドラミングはめちゃめちゃかっこいい。叩いている途中でマスクを外して投げ捨てるところはめちゃめちゃかっこよかった!今その場面を頭の中、記憶の中で反芻して、ふと同じような場面が蘇ってきました。シドニーオリンピックの女子マラソンで、高橋尚子選手が終盤にギアを上げ、沿道で応援する家族に向けてサングラスを外し投げるシーン…状況は全く違うんだけど、ハルカは高橋尚子選手と同じ「ハンサムウーマン」なんだって勝手に思ってしまいました。ウーマンというと「女性」を分けてみていると思われるかもしれないね…でも、男性だとか女性だとかLGBTQ+だとか言うんじゃなくて、ひととしてかっこいい、って思ったのです。そういう思いからすると「ハンサムウーマン」というよりも「ハンサムヒューマン」という方がいいのかもしれないな(と、今、描いていて思ったので、これからは「ハンサムヒューマン」ということにしよう)。

それから、出番はあまり多くはなかったけれど、ハル[萌映;クレナズム Vo, Gt]とミナの(のちにハルカも)行きつけ(?)のスタジオの店長が、妙にとぼけた雰囲気で、でも、ちゃんとミナの気持ちを組んでいてくれているらしいところに、とても癒やされました。いまさらではあるけれど、僕はああいう雰囲気の大人になりたかったような気がします。

そしてなんといってもこの映画の主題歌「ふたりの傷跡」…この歌詞の深みをしっかり見つめ、受け止められているかどうか?僕は若干自信がありませんが、ふたりの傷跡、ふたりの傷跡、ふたりの傷跡…と繰り返し歌い上げられるこのフレーズは、この映画を観てよかったという思いとともに強く心に刻み込まれました。映画のストーリーがあって、その後に主題歌が作られたのだろうと思いますが、物語にこれほど寄り添った歌詞と音並びを創り上げられるって、プロのミュージシャンにとっては当たり前のことですか?僕にはこれはとてもすごいことなのではないかと思えました。クレナズムというバンドのことを、この映画で知ることができたことも、この映画を観られてよかったと思うことの一つです。

もしも叶うならもう一度劇場で観たいと思っています。
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