ノラネコの呑んで観るシネマ

バカ塗りの娘のノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

バカ塗りの娘(2023年製作の映画)
4.3
とても良い映画。
小林薫演じる津軽塗の職人と、その娘の堀田真由の物語。
津軽塗は塗っては削り、塗っては削りをバカ丁寧に繰り返すので、「バカ塗り」なんだそう。
職人の父と娘の映画は、先日人情喜劇の「高野豆腐店の春」を観たが、こちらはもう少しマジメ系。
まだ何者でもなく、人生の岐路に立つ娘が、津軽塗を仕事にすることを決めるまでの話を軸に、頑固親父、離婚した母、後継を拒否した兄の、家族の物語が展開する。
それぞれに別の生き方を選択した母と兄の存在が、コントラストとなる構造。
映画は主人公の揺れる心情を、非常に丁寧に追ってゆく。
正直、漆塗りがこれほど手間の掛かるものだとは知らなかった。
そんな一生モノを作ることに、本当に人生を賭ける価値があるのか否か。
物語の後半で主人公が作り上げるあるモノが、雄弁にその答えを見せてくれる。
伏線も巧みで、映画は上々の仕上がり。
最初ぼんやりさんだった主人公が、モノ作りを通してキリッとした顔つきになってくるのも良い。
映画を観ると、何か小物でいいから津軽塗を欲しくなる。