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攻殻機動隊 SAC_2045 最後の人間のmeruemuのレビュー・感想・評価

4.7
見終わった第一印象としては、ヘーゲル哲学とニーチェ哲学を分かりやすく再考させてくれる物語だったなぁと、、、🤔
今作品再編集版と言うことで80%位は見たことあるシーンの繋ぎ合わせだったけど、〜最後の人間〜っていうサブタイトル聞くまで前作のお話がニーチェ哲学に出てくるあの最後の人間のオマージュであったことに気付かなかった自分が恥ずかしい、、最後の人間というサブタイトルでやっとこさニーチェ哲学の終末人を思い出したけど、調べたらもっと侮蔑的な意味を排した希望的なフクヤマ解釈なるものもあり、新しく追加されたカットまで含めると、ニーチェの意味する侮蔑的な''最後の人間''とフクヤマ解釈の希望的な’’最後の人間''と、どちらともとれる2つの解釈の余地を残していた。この攻殻機動隊ghost in the shell Stand_Alone_Complexの世界線に於ける持続可能性戦争サスティナブルウォーを行うヒューマンは、ヘーゲル哲学の言及する所の「最初の人間」であり、君主道徳の中の「善」を行う者達である。そこから脱し、Neo東京の住人となり、摩擦係数ゼロ社会を形成する者達がニーチェ哲学(若しくはフクヤマ解釈)の言及する所の「最後の人間」所謂ポストヒューマン、奴隷道徳の中の「善」であった。全く同じ結末を見たはずの観客に、どちらの「善」を自分の中の善とするかによって、超絶望的結末だったのか超希望的結末だったのか真逆の最後を迎えるっていう構成になっていたと感じた。
最期に世界の選択権を選んだ草薙素子だけがポストヒューマンへの進化を自覚していて、彼女だけが文字通り世界で最後の人間になってしまったという意味でもダブルミーニングになっていて上手いサブタイトルだなと思った。
あと、物語のキーワードであり、登場人物たちが何度もその意味を問うていた「N」の意味に関しては、「Neo東京」の住人であるという意味の「N」と、皆それぞれ別の世界で生きている∴「n=1」という意味の「N」で少なくとも二つの意味が係っていたのでは?(勿論もっともっと含意してると思う)という独自考察。 
派手なサイバーパンクの部分が特出されがちだけど、作品毎に様々な哲学や思考実験要素が散りばめられていて
その緻密なストーリー構成に三嘆を禁じ得ないよねぇ〜
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