てっぺい

SAND LANDのてっぺいのレビュー・感想・評価

SAND LAND(2023年製作の映画)
4.0
【鳥山明映画】
鳥山明の短編漫画を映画化。昔夢中だったドラクエ、ドラゴンボール、アラレちゃんの世界観があちこちに。原作にない要素もいい意味で加わり、童心に帰り、肩肘張らずに楽しめる一本。

◆トリビア
○ 原作は『ドラゴンボール』終了後、全1巻の短期集中連載で描かれた作品で、ストーリーも鳥山明にしては珍しく最後まで決められ描かれた。(https://ja.m.wikipedia.org/wiki/SAND_LAND)
週刊連載にも関わらず冒頭から結末までアシスタントなしで一人で描き上げたのは本作が唯一で、隅々まで自身の画力と気力をつぎ込んだという。(https://s.animeanime.jp/article/2023/03/22/76255.html)
○鳥山明は「SAND LAND」について次のように語る。「ドラゴンボールも終わり、いろいろ短編や読み切りも試してみたし、 最後のつもりで今の自分を出し切った作品を描いてみようと思いました。 (映画化について)これを楽しいって言ってくれる人って、 まさに僕にとっては、わかってる神ファン!」(https://sandland.jp)
○劇中に登場する戦車のモデルはペンギン。また、キャラクターの動きは役者の動きをモーションキャプチャして描画している。(2023年8月16日放送「ZIP!」)
○ 2022年12月に「SAND LAND project」の始動が発表、『SAND LAND 完全版』の発売や、『SAND LAND フルカラー版』の連載開始(『最強ジャンプ』2023年9月号より)のほか、ゲーム化も進められている。(https://ja.m.wikipedia.org/wiki/SAND_LAND)
本作の公開を機に『COWA!』や『カジカ』など鳥山明の他の短編漫画への展開も期待される。(https://realsound.jp/book/2023/03/post-1286341.html)
〇入場者プレゼントは、鳥山明ハイパーアソート。60万名限定で、鳥山明描き下ろしアートボード(A5サイズ)とスーパードラゴンボールヒーローズバトルカード:ベルセブブのセットで、なくなり次第終了。(https://www.entanow.com/sandland-toku/)
〇本作は「ドラゴンボール超 スーパーヒーロー」('22)で採用された全編3D化アニメーションで製作。コストのかかる手法ではあるが、入場者特典のバトルカードはバンダイナムコのカードゲームへのプロモーションも兼ねており、本作の製作は同社HDによる独自のアプローチ、ビジネスモデルと言える。(https://eiga.com/extra/hosono/215/)
○劇場ではパンフレットの他、多数のグッズを販売。グッズはトーホーアニメーションストアで通販も行う。(https://sandland.jp/news/)
○ 本作と“砂”つながりでコラボしている鳥取県は応援企画の一環として、鳥取砂丘の美術館にベルゼブブたちを表現した砂像(幅約2メートル、高さ約2メートル、奥行き約1・2メートル)を9月30日まで展示する。(https://www.asahi.com/sp/articles/ASR856VB0R85PUUB002.html)

◆概要
【原作】
「SAND LAND」(「ドラゴンボール」鳥山明による2000年のコミック・全14話)
【監督】
「COCOLORS」横嶋俊久(本作で長編デビュー)
【声の出演】
田村睦心、山路和弘、チョー、大塚明夫、茶風林、飛田展男、鶴岡聡、杉田智和、遊佐浩二、吉野裕行、こばたけまさふみ
【公開】2023年8月18日
【上映時間】106分

◆ストーリー
魔物も人間も水不足に苦しんでいる砂漠の世界・サンドランド。悪魔の王サタンの息子で「極悪の悪魔」を自称しているが少年のように純粋な心を持つ王子ベルゼブブは、盗みが得意で物知りなお目付け役の魔物シーフや正義感の強い人間の保安官ラオとともに、広い砂漠のどこかにあるという「幻の泉」を探す旅に出る。


◆以下ネタバレ


◆鳥山明
ワルだと主張するベルゼブブが全然ワルじゃない。全体的にコミカルで優しい、鳥山明感に浸れる構成。細かく言えば、魔物の群れにいたスライム(死にかけ)やギガンテス(?)にガーゴイル。ゼウの乗る球体や機械眼はフリーザそのものだし、虫人間にはセルやピッコロ感あり。虫人間が爆発する様はクリリン感だし、そもそもベルゼブブの髪型がスーパーサイヤ人。スイマーズはフォルムや立ち位置がどこかギニュー特戦隊で、シャークとベルゼブブの追いかけっこにはアラレ感も。こと映画版に関しては、ベルゼブブに飛ばされたゼウが遠くに飛んでいきキラリと光る、まさにアラレ感(心でガッツポーズするほどニヤリもの)。原作も本作も、昔夢中だった鳥山明の世界観が満載でニヤつくばかり。

◆絆
警戒心から、はじめは無弾の銃を装ったラオ。旅の中で心を通わせ、“あのおっさんがあるって言うなら泉はありそうだ”と、ベルゼブブから信頼を寄せられ始めたラオは銃を放ち、“あの時はまだあんたたちを信用してなかった”、つまり今は信用しているんだと語る。“ラオでいい”“ベルゼでいい”とお互いの呼び名を決める、原作になかったくだりがあることで、本作ではより2人の絆が深まっていく過程が強調。ラストではラオの“ついてくるか?”に“あったりめえだ”と返す2人の関係性になんとも心が温まる。

◆演出
ベルゼブブの揺れる髪に、モーションキャプチャで実際の人の動きをアニメにした、キャラクターの動作の滑らかさ。戦車の質感の再現性や、セリフにリップを合わせた口の動きも何気に素晴らしい。「ドラゴンクエストⅨ 星空の守り人」のアニメーションムービーを担当したご縁で本作を担当する事になったという横嶋監督は、とにかく鳥山明の世界観の再現性にこだわったそう。前述の、飛んで光るアラレ演出も個人的に◎だし、原作と違って虫人間が多数放たれた事で、王子とのバトルもより見ものに。ゼウとラオの直接対決があった事で、よりゼウの性悪ぶりが際立ち、勧善懲悪が強調。バスタブに浸かるサタン含め、エンドロールでも原作にない“水の戻った世界”を表現した演出が素晴らしかった。本作に是非とも成功してもらい、鳥山明の他の短編漫画の映画化に繋がることを期待したい。

◆評価(2023年8月18日時点)
Filmarks:★×4.2
Yahoo!検索:★×4.0
映画.com:★×4.1

引用元
https://eiga.com/movie/99137/
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/SAND_LAND
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