鳥山明が2000年に発表したコミックの映画化作品。
魔物と人間が住むサンドランドでは、深刻な水不足が続いていた。保安官ラオは、どこかに泉があると信じて、悪魔の王子ベルゼブブと共に捜索に出かけるが……。
権力者が水を独占している砂漠の地で、水源を求めて旅に出るという設定は『マッド・マックス 怒りのデスロード』を彷彿とさせるが、フェミニズムえいがだったあちらとは異なり、こちらはほぼ男性しか出てこない。こちらのテーマは差別や偏見。人間から蔑まれている悪魔の王子を通して、登場人物たちの正義のあり方や醜さが浮き彫りになっていくという構成になっている。
純粋に絵柄が可愛くてストーリーが面白く、キャラクターが非常に魅力的なのでグイグイと引き込まれる。ベルゼブブを除く主要キャラがほとんどおじいさんというのもユニーク。浮ついたところがない、地に足がついた冒険譚に仕上がっていた。
『ドラゴンボール』に見慣れているからか、正直バトルシーンのスケールが物足りなくはあるのだが、そもそもバトルマンガじゃないしね。自分の信念に従って偏見に打ち勝つ、というどこまでも正しいテーマは誰にでもおすすめできるし、時代も選ばない気がする。子どもから大人まで素直に楽しめる佳作。