三隅炎雄

仁侠八方破れの三隅炎雄のレビュー・感想・評価

仁侠八方破れ(1966年製作の映画)
3.8
井田探監督、服部佳脚本、高橋英樹・野川由美子主演の異色着流し任侠映画。やくざの親分の家に生まれた野川が知らず知らず愛してしまった高橋こそが、彼女の父を殺した元侠客の高橋だったという悲恋物だが、面白いのはやくざから足を洗った高橋が写真師になるという設定で、写真=表現と任侠の間で引き裂かれる高橋の姿に、任侠映画の作り手たちの葛藤が投影されている。写真の師匠芦田伸介に「やくざは弱い者いじめて生きるやつらで、写真=芸術とは相容れない」みたいなことを言われて、高橋は大いに苦しむわけである。芦田伸介は『東海遊侠伝』で小林旭がやくざである自分の汚い現実から目を背けるためにのめり込んだ柔術の師匠役でもあった。『東海遊侠伝』でやりそこねたのを、ここでもう一度形を変えて井田が語り直していると言っていいだろう。
根上淳が着流し姿の殺し屋を無国籍映画風に演じて面白い。悪党名古屋章一家は町奴風とも見える派手な衣装ぞろいで、映画の虚構度を上げている。
三隅炎雄

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