黒苺ちゃん

さらば、わが愛/覇王別姫 4Kの黒苺ちゃんのネタバレレビュー・内容・結末

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このレビューはネタバレを含みます

すさまじい映画だった。

母に捨てられ京劇の劇団に入れられた少年がやがて相方の青年と『覇王別姫』の演目で一世を風靡するが、密かに恋心を寄せていた相方に遊女の妻ができたことをきっかけに登場人物全員の人生が孤独に崩壊していく壮大な物語だった。

元ネタは楚の項羽(覇王)が敵国に攻め入られて愛人の虞美人と死に別れるまでを描いた京劇の古典『覇王別姫』(「虞や虞や汝をいかんせん」の四面楚歌のやつ)で、主人公たちは20世紀の中国でそれぞれ覇王と虞美人を演じている。彼らの人生にはその京劇の顛末が投影されているわけだが、そのうえさらに日中戦争から文化大革命に至る中国近現代の政変が重ねられていて、時の権力者の意向によって次第に彼らの芸能が文字通り「四面楚歌」に陥っていく脚本の構成がまじで見事だった。

多指症の息子の指を切り落とすシーンや遊郭で姫が飛び降りるシーン、少年の首吊りや最後の広場での断罪など、見せなければいけないシーンをこれでもかと演出してしっかり見せてくる巨匠感もすごかった。
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