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さらば、わが愛/覇王別姫 4Kのjazzyhalのレビュー・感想・評価

5.0
【前置き】
この世の映画はおよそ2種に分けられるであろう。

それは
1.人間の本質に迫るもの、芸術性の高いものを含有しており、時の試練に耐えうるもの。

2.いわゆる娯楽作品として広く大衆に受け入れられるが、その一方で時の試練には耐えられず、消費されていくもの。

厳密に分けられるものではないし、1,2それぞれに役割があるとは思うので、ここで2を否定したい訳ではない。
私だって娯楽作品が好きだし、時たま観ている。
しかしどちらかというと、より本質的なものが好きではあるし、映画には元来そういった1の要素を少なからず持って欲しいとも思う人間である。

【本編】
さて、話を本作に戻すと、
これは第二次大戦前後の激動の中国を、京劇役者を中心に描く一大大河劇とも言えるもの。
恐らく20世紀半ばの中国史の一つの黙示録たりうる作品だが、
この上述した1の要素が抜群の映画であり、まさにアジア映画を代表する稀有な作品というべき他ないだろう。
10年以上ぶりに、しかも劇場で見返すことができたが、改めてこの映画が持つ凄まじい熱量を感じることができた。
公開から30年経つが、今持ってその熱量は色褪せることがない。

観ていただければ分かるが、ハッキリいって、こんなアジア映画はもう二度と現れないだろう。今の世情からいっても。

それほどまでに圧倒的である。
映画そのものの持つパワーにグイグイと引き寄せられていき、
3時間、ただただ圧倒され続けたのだった。
観終わって、呆然とした。

スクリーンから迸る、
愛と憎しみ。
人の営みと人の愚かさ。
歴史に翻弄され続ける人たち。

そして、圧倒的な美しさ。
活眼せよ、
これほどまでに美しいアジア映画があるだろうか。

人の役割とは、業とは。
言葉には言い表せない、
これらの凄みと重みを、
圧倒的なエネルギーと美をもってして
ぶつけてくる作品である。

見事という他ない。
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