鈴木ピク

劇場版 ポールプリンセス!!の鈴木ピクのレビュー・感想・評価

劇場版 ポールプリンセス!!(2023年製作の映画)
2.8
見せ場は確かにすごい。

最初はちょっと不自然にさえ思える3DCGのポールダンスが、けれど実際にポールダンサーの動きをモデリングしているだろう実感として伝わってきて、「あぁ人の動きってこんな事もできるのか」という、CG越しの生身の発見みたいな感動がある。
2曲目、そこに早見沙織の歌声が乗った時の感動の相乗効果も大きい。

そもそも一時間ある映画のうち「見せ場」が後半ほぼ半分を占める贅沢さ。
でも、じゃあ映画として面白いかというと、ただリズムゲーのMVがスクリーンでかかっているだけみたいな味気なさがあった。

後半の見せ場にいたるまでの前半の「前振り」の部分が明らかにスクリーンに耐えられていない、凡庸な状況説明の羅列にしかなっていないから。
この映画の世界観の中における「ポールダンス」の在り様がまるで呑み込めていないまま、登場人物それぞれの思い入れやドラマをぎしぎしに詰め込み、ショットは弛緩し続ける。話が頭に入ってこない。
後半にしかコストを割けないから前半は捨てたにしても、語り口の可能性はまだまだ無限にあったはずで、その模索の跡さえ見えず紋切り型を良しとしている惰性を嗅いだ。
しかもこの説明パートが後半に効いていればいいのだが、アニメスタイルも普通の作画だし、ポールダンスシーンと切り離されているようにしか見えなかった。
後半だけで成立しちゃうのだ。一貫した世界の重力からの飛躍がダンスシーンに生じない。

カルト的な人気は博しているけれど、信者さえつけばそれでいいんだろうか。
鈴木ピク

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