シズヲ

マーサのシズヲのネタバレレビュー・内容・結末

マーサ(2019年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

誰も居なくなった世界で少女がただひとりだけ取り残される短編映画。自分以外の人間が忽然と姿を消すというSF的設定で話を引っ張りつつ、序盤の病院や交通事故などが端的な伏線として描かれている。高台の広場に夕陽が射す場面など、要所要所の画面作りできっちり印象を残しているのが良い。引きの撮影によって作り出されるムードが忽然と佇むような孤独を演出し、“廃墟と化した街にひとり取り残される寂寞感”を画面に浮かび上がらせている。

冒頭では母親からの留守電やメモを適当にあしらっていた主人公が孤独の世界に取り残され、焦燥の中で喪われた日常を噛み締めていく。終盤で明かされる真相によって、その取り返しの付かなさが際立つのが切ない。そしてもう一人の登場人物の存在が展開のフックを作りつつ“事態”と“真相”を仲介する役割を担う。真実は遣る瀬無くて、奇跡が起こることも遂になかった。それでも今際の時まで母親がずっと傍に居てくれたこと、“巻き込まれた被害者”である筈の彼女が寄り添ってくれたことは、終わりへと向かう中での孤独を少しでも癒やしてくれたのかもしれない。
シズヲ

シズヲ