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リトル・ニモ (パイロット/近藤喜文・友永和秀版)のshxtpieのレビュー・感想・評価

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こんなものまでFilmarksに登録されているんだ(ドキュメンタリーとか、登録されていない作品が多くて、ちょっといらいらするのに)。『リトル・ニモ』のパイロットフィルムはものすごい作品なので、見たことがないひとは、すぐにYouTubeで検索して見てほしい。度肝を抜かれると思う。

『リトル・ニモ』は、『長靴下のピッピ』やホドロフスキーの『デューン』に並ぶ幻の企画だが、一応、完成はしている。経緯は、スタジオジブリのファンなら誰でも知っているだろう。もともと、東京ムービー新社の藤岡豊が「アメリカで一発当てたい」という野心から原作の権利と予算を集めて、テレコム・アニメーションフィルムを設立し、宮崎駿や高畑勲、メビウスまでを動員して、打倒ディズニーな長編アニメーション映画をつくろうとした。しかし、紆余曲折あって、制作は長期化の末に迷走。とんでもない時間と金をかけて、スタッフを何度もクビにして、1988年に完成した、壮大な失敗作だ。

このパイロットフィルムは、その過程でつくられた、近藤喜文と友永和秀によるもの。宮崎と高畑が抜けたあとに制作されている。緻密で躍動感にあふれたアクションのたのしさ、新鮮さは、ほんとうに驚異的。キャクターデザインがあまりにもバタくさい(アメリカ的)だが、それに目を瞑れば、当時の日本のアニメーション技術の粋を極めた、とんでもない映像表現だと言える。これが実際に映画になっていたら……と、とにかく残念に思う。実際、アニメーションの歴史がちょっと変わっていただろう。ちなみに、わたしは、完成版の『ニモ』をいまだに見たことがない。
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