けんせー

ミッシングのけんせーのレビュー・感想・評価

ミッシング(2024年製作の映画)
4.8
完成披露試写会にて
舞台挨拶での石原さとみさんの一言目「皆さん、本日は…」の段階で声を震わせて涙していて、いきなり胸が熱くなった。この作品が世に届くことに嬉しく思っていて、開始早々涙するほど大事な作品とのこと。
曰く、吉田恵輔監督作品を通じてひと回り成長したいと7年前に吉田作品への出演を直談判していたそうな。完全オリジナル作品として、妊娠出産を終えた後に素晴らしい形で実現したのではないだろうか。

吉田監督は脚本を書く中で、家で一人演技しながら実際に感情入る部分は涙流しているようで、作り手のリアルを垣間見た気がした。

それから青木崇高さん、誰よりも多く、舞台から下がる時に3回くらい違う方向にお辞儀していてすごく良い人なんだなとしみじみ。

そんな本作、『空白』を観た時と同じように常に不穏なことが起きるんじゃないかとソワソワ感の蔓延状態。

中盤の沙織里が明確に壊れるところは、息が詰まるほどの苦しさから血が沸き立ち、自分の体温がグッと上がっているのを感じた。(石原さとみさん、凄すぎる…)

やることなすこと空回り、ネットでは誹謗中傷の嵐。常に妻よりは一歩引いた目線でいた夫の豊が、確かに感じた自分たちの外側の人の変化に対して感情が漏れ出したところに、絶望の中にも小さな光はあると吉田恵輔監督のメッセージが込められていると感じた。

中堅社員ながらメディアの在り方に常に疑問視を持つ中村倫也さん演じる砂田は、唯一我々の等身大の存在であり、この作品におけるセーフティゾーン的存在で安心する。

沙織里の弟役を演じた森優作さんの目に光がない演技が凄まじく、そして作品内の重要シーンが、姉と姪を持つ自分の実体験と全く被る部分があり、記憶のフラッシュバックと同時に涙が溢れ出た。

何かの事件をもとにしたわけではないけど、日本のどこかで本当に起きてるんじゃないか?といったリアルさがあり、そして自分も知らず知らずのうちにネット上で加害者になってないか?と考えさせられる作品。

最後に舞台挨拶で語っていた吉田恵輔監督のメッセージより
「この作品を観た人が少しでも優しくなってもらえたら嬉しいです」

071/2024

#ミッシング試写会