ぁえ

ミッシングのぁえのレビュー・感想・評価

ミッシング(2024年製作の映画)
4.0
んー、、って思ってたらラストシーンが来て呆気なく終わっちゃった どの立場にもなったことがないから、すべての出来事を他人事としてしか捉えられなくて もちろん感情移入はするし思わず泣いてしまうシーンもいくつかあったんだけど、わたしが泣いても沙織里の苦しみは計り知れないし美羽ちゃんは戻ってこないから 冷静になるしかなかったって表現が一番合うかな 物語が進むにつれてどんどん感情の起伏を制限されてく感覚だった

わたしはたぶん沙織里が必死にビラ配りしてる横をイヤホンで音楽聴きながら通り過ぎてしまう人間だから 善を与える側になろうとしてないのを見透かされてる気がして目を逸らしたくなった 吉田監督の作品は大好きだけど、吉田監督の描く人間はとことん汚くて綺麗でリアルだからたまに怖くなる 帰り道どうしようもなくなって、音楽も聴けず、空いてる席に座る気にもなれず、ただただぼーっと突っ立ってた

上映前の舞台挨拶で、吉田監督が「石原さとみは起用したくなかった、華がありすぎて自分の作風と合わないから」ってお話ししてたんだけど、その言葉の意味をとてもよく理解できた 見た目は石原さとみ史上いちばんボロボロだった(役作りのために毎日髪をボディーソープで洗って、髪も肌も爪も汚くなるようにしましたって言ってた)けど、お顔が綺麗すぎて 暴言吐いても舌打ちしてもなにをしててもとにかく美しかった

ただ、朝方布団の中で涙を流しながら手を握るシーン、あの瞬間は確かに沙織里がそこに居た 常に疲弊し切ってた沙織里が、初めて光の中に存在してた どんな夢見てたんだろう 優しさ、苦しさ、弱さ、醜さ、沙織里のすべての感情をあの表情だけで読み取れてしまうような いまにも壊れそうで脆い笑顔 ゾクっとして鳥肌が立った 石原さとみの演技というより、沙織里としての生き方を見せつけられて目が離せなかった

あの夫婦の周りにいる人たち、最後まで付き合い切れないのに中途半端に救いの手を差し伸べる人間が多すぎて むかついたけど実際はあんな感じなんだろうなー

吉田監督は、これを観て少しでも優しい気持ちになれますように、って言ってたけど 全然なれなかったな 心に残ったのは残酷とか絶望とかそんな感じのことばかり 暗闇の中に小さな光が差し込む描写がある映画は好きだけど、あの光は光よりもっと弱々しい灯りみたいなものだった これを観て悲しくなったり優しい気持ちになったりできるのは、たとえ偽善と言われても他人に善を与えることができる温かい人だと思う
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