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ミッシングのxoのレビュー・感想・評価

ミッシング(2024年製作の映画)
3.5
とても吉田恵輔監督らしい作品。今回も、人と人との心の距離をめぐる話。物理的に近いほど憎しみが湧き、離れるほど愛が育つ。そうした中で主人公がどうにか現実との”折り合い”をつけようと踠き続ける。

娘の失踪事件は”マクガフィン”程度のもので、作劇上の焦点は物語の解決ではなく、事件を受けての周辺人物たちの様子とそのやり取りにある。
誰もみな問題を抱えている。人間の不完全さを泥臭く描かせたら吉田監督の右に出る者はいない。人間の多面性や奥深さ、気まずいコミュニケーションの数々。他者との”温度”の違い、疑心暗鬼、本音と建前の使い分け。
被害者/加害者、善人/悪人のような切り分けの余地を避け、「うーむ…考えさせられる…」な、感情の持って行き場のない場面が断続的に続く。

とりわけ今回は全編を通して、やるせないことばかりが起こり続ける。世の中の残酷さというか、諸行無常というか、「なんかイヤな感じ」な場面の連続。

作品タイトルは「空白」でも良いと思うくらい、物語の骨格に重なるところがある。予測不可能な主人公という意味で石原さとみは古田新太と同じ。観客がハラハラしながら見守ることになる。
前作がYoutuberなら今作はテレビの報道記者。大衆の欲望を相対化し刺激することを本分とする仕事をメタな視点で描いていく。時に「由宇子の天秤」を想起。真面目よりもイヤなヤツほど出世するのは「神は見返りを求める」と同じ。

とても見応えはあるものの、全体を通してみると散漫な印象が残った。いろいろ詰め込みすぎじゃないかな。。
見る側に考えることを促したい作り手の気持ちはわかるんだけど、演出がかなりそっち(メッセージの伝達)に寄っている印象。。
演出のくどさ、わざとらしさも気になる。後ろで何か起こってる(怒ってる)シーンの数々。。

各所ではさまれるギャグも効いてない。監督が舞台挨拶で「大喜利」と言っていたのが腑に落ちたが、全体のトーンがかなり暗く重いため、単に空気が読めていないだけみたいになっている。「夜明けのすべて」のそれとは大違い。

個人的には「空白」よりもヘビー。”希望の光"が未だ残されている状況だからこそ残酷でもある。
残酷な世界にも光があることを訴えたいのだとしたら、終盤の演出は弱すぎる。最後はなんとなくムード優先で強引に畳もうとしている印象。
「空白」のようにカタルシスを設けず、モヤモヤしたまんま終わらせたのは意図的だろうけど、ここまで耐えてきた者としては、具象的な何かが欲しい。。悲劇的な向きが強いわりに、それを通して得られるものが乏しいと思ってしまった。
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