マリナ

ミッシングのマリナのレビュー・感想・評価

ミッシング(2024年製作の映画)
4.0
大阪プレミア試写会で鑑賞。

舞台挨拶で石原さとみさんが「命をかけて演じた」とおっしゃっていた彼女の演技はたしかに鬼気迫るものがあった。

しかし、彼女より目を見張る演技を見せたのが彼女の夫役を演じた青木崇高だ。

身長185センチ、がっしりとして明るく、るろうに剣心の相楽左之助役で一躍人気俳優となった彼は、その後も肉体的な活躍が見られる役での出演が多かった。

しかし今回のミッシングではこれまでのワイルドさとはかけ離れ、失踪した娘を案ずる父親役をとても繊細な演技で演じている。

特に屋外の喫煙所でタバコを吸っているシーン。
目の前に失踪した娘と同じくらいの年頃の女の子が両親と歩いているのを見かけ、目を真っ赤にして泣くのを堪えながらその子を見つめる表情はまさしく父親そのものだった。

あぁ、あなたこっちの演技もできたのね、と新しい発見にとても嬉しくなった。
この作品をきっかけに、これからはこういった静かな役もたくさんオファーが来るんではなかろうか。
石原さとみがこの映画でさらにキャリアを重ねるように、また彼もますます素晴らしい役者になっていくのを感じさせる演技だった。

映画はシーンとシーンの切り替わりがいつも文脈の途中みたいなところで変わるのが気になったが、ほんのわずかな情報の断片だけで自分勝手なストーリーを作り上げ、ネットで叩く現代社会が当事者にどのような悪影響を与えているのかを描いており、本当に心が苦しくなった。
しかし、そんな社会でも少なからず支えてくれる人はいて、そういった小さな明るい希望がわずかに見えるラストも良かった。

重たい作品ではあるが、是非多くの人に観てもらいたいと思う。